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第52会期人権理事会でウクライナやリビアの人権状況に関して議論(2/27~4/4)

 第52会期国連人権理事会が2月27日から4月4日まで開催され、ロシア侵攻によるウクライナの人権状況、リビア、ミャンマーなどの人権状況などが議論されました。

ウクライナの人権状況
 2022年3月の第49会期人権理事会は国際調査委員会の設置を決議しましたが、その委員会の報告書が今会期に提出されました。報告書は、住民多住地域におけるロシア当局による民間人への危害を無視した不均衡で無差別の攻撃、エネルギー関連施設に対する攻撃、ロシアの支配地域における殺害、拷問、性暴力、子どものロシアへの移送など広範な人権侵害と人道法違反が行われ、その多くが戦争犯罪や人道に対する罪にあたると結論づけています。一方、ウクライナ軍についても、ロシア人捕虜、ロシアへの協力を疑われた人の拷問や虐待が報告されていることが挙げられています。
 人権理事会は多くが戦争犯罪にあたる人権侵害や人道法違反について深刻な懸念を表明し、ロシアのウクライナに対する侵略によって起こった人権侵害や人道法違反を強く非難し、ロシアに対して人権侵害と人道法違反を直ちにやめ、速やかに軍を撤退させることを呼びかけ、紛争の両当事者に捕虜をジュネーブ条約に則り処遇することを要求する決議を採択しました。

リビアの人権状況
 リビアでは、2011年から内戦が続くなか、欧州に渡ろうとする多数の移民・難民が同国に滞在していますが、人権理事会は43会期において同国の違法な拘束、強制失踪、拷問や殺害を含む人権侵害や人道法違反を非難し、人権高等弁務官に同国の人権状況について事実調査団を派遣するよう要請する決議を採択していました。
 調査団は今会期、最後となる4回目の報告を提出しました。報告では、武力衝突の際、殺害、強制失踪、略奪などの人権侵害や人道法違反があったと信じるに足る合理的な根拠があったほか、チャドやロシアからの傭兵による違反も見られたと指摘しています。また、自由の剥奪が広範に行われており、国内には41以上の収容所があり、政府のいう18,000人よりもはるかに多くの人が拘束されていることが示唆され、これらの収容所で殺害、拷問、レイプを含む非人道的な行為が行われ、人道に対する罪に当たり得ると述べています。
 この報告に加え、移民に対する人権侵害や人道法違反と、政府批判、異なる政治的、宗教的、社会的見解の表明などに対する表現、集会や信仰の自由の侵害、殺害、拷問や性暴力を含むジェンダーに基づく暴力による抑圧についての詳細な報告が出され、人道に対する罪に当たり得る重大な人権侵害や人道法違反があげられました。報告はリビアにおいて女性の地位やジェンダー平等に関する当局の立場が硬化し、文化的、社会的に許容されない行動をとったとみなされた人に対する性暴力およびジェンダーに基づく暴力が振るわれ、性的指向や自認、または政府に対する批判を理由とする殺害、拷問、レイプ、恣意的拘束や強制失踪が行われているとしています。また、移民に対する犯罪が広範で体系的に行われており、当局の共謀や関与が示唆されることを指摘しています。当局、または武装集団に拘束された移民は拷問や非人道的な扱いを受け、性奴隷、強制労働、性暴力を含む暴力や殺害も報告されています。
 4月3日には事実調査団と人権理事会の対話が行われ、Auajjar調査団長は、リビアの人権状況は非常に深刻であり、独立した国際的な調査メカニズムの整備が必要であることを訴えたものの、リビアは調査委員会や調査メカニズムの設置を拒否しました。人権理事会は最終的に人権高等弁務官事務所に同国の人権状況を改善するための技術援助を要請することを決議しました。

 人権理事会はそのほか、ハイチについて人権高等弁務官に同国の人権状況をモニターする人権専門家を任命するよう要請する決議のほか、ミャンマー、北朝鮮、ベラルーシ、シリアの人権状況などについても決議を採択しました。

清潔、健康で持続可能な環境への権利
 清潔、健康で持続可能な環境への人権義務の問題に関する特別報告者は、今会期、女性と少女の清潔、健康で持続可能な環境への権利に関する報告書を提出していました。報告書は、父権主義や女性と少女に対する制度的差別などから、彼女たちが地球の環境危機の影響を不均衡に被っていると述べています。例えば、住居の敷地内に水のアクセスがない家庭の約80%で女性が水を運んでくる責任を負っています。サハラ以南のアフリカおよび南アジアでは水の確保に女性が多大な時間とエネルギーを費やし、少女の場合は学校に行けなくなっています。一方で情報へのアクセスや意思決定への女性と少女の参加は限定的で、2020年現在、世界の環境担当大臣のうち、女性は15%しかおらず、国連の環境に関する国際会議でも女性の代表は少ないことを指摘しています。
 そのような状況に対して、報告書は、国家の義務として、手続き的義務、実質的義務、および特別の義務があるとしています。手続き的義務は、情報と教育を通して女性と少女をエンパワーすること。実質的義務は、意味のある平等な参加を確保する、司法と救済へのアクセスを確保するなど、女性と少女の清潔、健康で持続可能な環境への権利を法的に認め、普遍的な水のアクセスや十分な衛生施設、安全な食用油、加熱・暖房技術などの確保などを通した環境への権利の充足を図ること。特別の義務は、先住民族の女性および少女など特に脆弱な立場にある人たちに対する義務のこと。また、企業は「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、企業活動による人権と環境への否定的な影響を特定し、防止・緩和し、ジェンダーの実質的平等にコミットするなどの責任があると述べています。
 人権理事会は、報告書を歓迎し、気候変動や環境悪化に対する取り組みにおいてジェンダー平等とジェンダーに対応した行動が重要であることや、先住民族や子どもへの影響を認め、各国に環境について、参加の権利、情報や救済を含む司法へのアクセスなどを確保する法律の制定と実施、人権や環境に関わる個人や市民社会組織、活動家が報復を恐れずに活動できる安全な環境の促進、清潔、健康で持続可能な環境への権利の享有のための包括的で分野横断的な政策と実効的な法枠組みの策定などを促す決議を採択しました。

世界人権宣言75周年とウィーンおよび行動計画30周年
 2023年は世界人権宣言の採択から75年と、「ウィーン宣言及び行動計画」の採択から30年に当たります。人権理事会は、各国にこの記念の年を活用して世界人権宣言とウィーン宣言及び行動計画についての啓発を行うことなどを促し、人権高等弁務官に各地域での対話や12月のイベントを含むプログラムを実施することを要請しています。

(構成・岡田仁子)

<出典>
https://www.ohchr.org/en/news/2023/04/human-rights-council-concludes-fifty-second-regular-session-after-adopting-43?sub-site=HRC
Human Rights Council Concludes Fifty-second Regular Session after Adopting 43 Resolutions、OHCHR、2023年4月4日 


(2023年04月11日 掲載)