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名古屋入管での死亡事件に関する報告書に対して移住連など4団体が抗議声明(8/17)

 名古屋出入国管理局で収用中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが2021年3月に死亡した問題で、出入国在留管理庁は8月10日に「調査報告書」を公表しました。この報告書は、出入国在留管理庁(入管庁)が選任した5名の「有識者」を入れただけの内部調査によるもので、死因さえ特定しないまま名古屋入管の対応を正当化するような内容となっています。また、同入管局の4人の幹部職員の責任が問われたものの、「訓告」および「厳重注意」という軽微な処分にとどまっています。
報告書において、入管庁は、改善策として「全職員の意識改革」、「医療体制の強化」、「被収容者の健康状態を踏まえた仮放免判断の適正化」などをあげていますが、死亡事件が起きた制度的・構造的な問題に関する分析を欠く内容です。
報告書に対して、メディアをはじめさまざまな分野から批判が高まっていますが、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)や恣意的拘禁ネットワーク(NAAD)など4団体が8月17日に共同記者会見を開き、再発防止および国際人権条約に基づいた入管収容問題の抜本的改革を求める声明を発表しました。
 
移住連は、「二度と入管収容施設で生命が奪われることがあってはならない」と題する声明で、「ウイシュマさんを死に追いやった入管庁の対応は、外国人差別に基づく虐待」と非難し、「特別公務員暴行陵虐罪」などに抵触する可能性があると指摘しています。また、ウイシュマさんが同居男性からのDV被害を訴えていたにもかかわらず、入管の担当職員がDV措置要領の内容や存在さえ認識していなかったことは極めて深刻で、DV被害者保護の体制を至急整備すべきだと訴えています。
また、声明は、現行の入管収容制度、とりわけ長期収容の問題点をあげ、国連の人権条約機関が日本に繰り返し勧告している収容代替措置の優先や収容期間の上限設置、および司法判断の導入を実現するとともに、国際人権規約をはじめとする人権基準をふまえた難民認定および在留制度への転換を求めています。
 
NAADは、ヒューマンライツ・ナウと外国人人権法連絡会と共同で、「そもそもウイシュマ氏の収容は『法』に則っていたのか」という抗議声明を発表し、「報告書は、退去強制令書が発布された者に対する原則収容主義を前提」としたものだと指摘したうえで、「収容が、日本が従うべき『法』である憲法及び国際人権法に則ったものかどうか、収容における強大な入管の裁量のあり方の検討は、全く抜け落ちている」と批判しています。
同声明は、2020年の国連恣意的拘禁作業部会による2名についての収容(別のケース)が恣意的拘禁にあたるとした意見に対して、日本政府が「事実誤認である」「収容は入管法に則っている」と反論し改善しなかったことをあげ、今回の死亡事故は国際社会からの指摘に真摯に耳を傾けなかった結果だと述べています。
声明は、改善策の冒頭に「全職員の意識改革」が挙げられていることに言及し、退去強制事由該当者であれば自由を奪われるのは当然であるという、他の先進国ではおよそ見られない根本的に差別的な法制、及び、憲法・国際法を軽視する法務省・入管の組織としての姿勢を改めなければ、個々の職員の意識改革も不可能であろう、と述べています。そして、「制度的改革なくして個々の職員の意識改革はなしえない」と断言しています。
 
<出典>
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/01_00156.html
名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告について
2021年8月10日 出入国在留管理庁
https://migrants.jp/news/voice/20210817.html
ウィシュマ・サンダマリさん死亡事件調査報告書に関する声明
 二度と入管収容施設で生命が奪われることがあってはならない
2021年8月17日 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
https://naad.info/joint_statement210817/
入管被収容者の死亡事件の政府調査報告書に対する抗議声明
~そもそもウィシュマ氏の収容は「法」に則っていたのか~
2021年8月17日 恣意的拘禁ネットワーク(NAAD)

(2021年08月19日 掲載)