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第38回人権理事会、「女性に対するインターネット上の暴力」の問題など20決議を採択(2018年7月)

 2018年6月18日から7月6日にかけて第38回人権理事会が開催されました。8月に任期が終了するゼイド国連人権高等弁務官が、開催にあたり世界の人権の現状について述べ、特に人権理事会の特別手続きや条約監視機関などのアクセスを拒否しているシリア、ミャンマー、ベネズエラ、ブルンジ、インド、パキスタン、ニカラグア、北朝鮮などの国々、また過去5年に一度も特別報告者の訪問調査を受け入れていない国が40か国もあることなどについて懸念を表明しました。開始の翌日の6月19日に米国が人権理事会からの脱退を表明しました。
 今会期では、女性および少女に対するインターネット上の暴力、インターネット上の人権の促進、保護および享受、気候変動と人権、HIV/AIDSの文脈における人権、企業と人権などに関する20の決議を採択しました。
 
女性および少女に対するインターネット上の暴力
 女性に対する暴力、その原因および結果に関する特別報告者が、女性と少女に対するオンラインの暴力に関する報告を提出し、女性の人権に関する議論の前半で、このテーマが取り上げられました。
 報告は、女性にとってインターネットなど情報通信技術へのアクセスが、エンパワメントにつながる可能性をもっている一方、オンラインでの暴力に遭遇する場でもあると述べています。女性に対するオンラインの暴力を、携帯、スマートフォン、インターネット、ソーシャル・メディア、メッセージング・サービスなど情報通信技術の使用を通して行われる、あるいは悪化する、女性であることを理由とした、または女性に対して不均衡に多く行われる暴力であると定義しています。
 報告は、技術の急速な発展により、住所などの個人情報の公開、個人的な写真の画像、映像などの公開、あるいは公開すると脅迫、オンラインでのハラスメント、ストーキングなど新しい暴力の形態が出現していることをあげ、人権規範の適用も発展していかなければならないことを指摘しています。また、女性の人権擁護者やジャーナリスト、政治家が特に標的にされ、しばしば性的な表現を含む脅迫を受けており、そのような暴力が女性の公的な生活への参加に対する攻撃であると述べています。加害者が匿名であることが多く、処罰されることがなく、女性はオンライン・オフラインいずれでも安全だと思うことができないことが懸念されています。
 また報告は、女性に対するオンラインの暴力に対して、サイバー犯罪法、刑法、DV法、ヘイトスピーチ法、プライバシーやデータ保護法などの法的措置をとった国がある一方、プライバシーの侵害や名誉棄損など、あるいは刑法の規定がない場合には民法で対応せざるを得ず、救済が不十分になると指摘しています。また、安全についての相談や緊急支援、啓発を行う民間組織についても紹介しています。さらに、各国にオフラインで保護される女性の権利が、オンラインでも保護されるという原則を実施し、女性の人権に関する国際基準に沿った、オンラインの女性に対する暴力を禁止する新しい法律を制定すること、女性に対する暴力となる有害な内容の公表を防止し、緊急に削除するための有効な措置をとることなどの勧告を行っています。
 報告を紹介するにあたり、特別報告者は、多くの国がデジタル空間における女性に対する暴力を「本当の」暴力だと認識していないと述べ、必要な措置として法的な保護や防止、有害なコンテンツを削除する手続きなどの整備をあげました。
 また、6月21日と22日、女性の人権に関する議論の日が設けられ、前半は女性人権擁護者に対するオンラインの暴力がとりあげられ、平等や権利を主張し活動する女性の多くが嫌がらせや脅迫を受け、オンラインでもその暴力が多発していることについて、国連機関、国内人権機関やNGOなどが発言しました。
 人権理事会は、デジタル技術の利用などによるジェンダーに基づく女性に対する暴力を強く非難し、オンラインの暴力防止のために直ちに行動をとることを求め、そのために女性が表現の自由や意見の自由な表明を差別なく、オンラインでもオフラインでも行使でき、その行使によって暴力や暴力の威嚇を受けないことを確保することという勧告を採択しました。また、司法におけるジェンダー・バイアスを取り除き、法曹関係者、法執行担当者の女性に対する暴力に対応する能力を高めること、企業などに国連ビジネスと人権の指導原則に沿って、女性の個人データを保護し、オンラインの暴力から女性および少女を保護する方針を開発することなどを勧告する決議を採択しました。
 
インターネット上の人権
 表現の自由に関する特別報告者は、ソーシャル・メディアなどユーザー制作のコンテンツに関して、ユーザーの発信するコンテンツの国家や企業による規制についてとりあげる報告を提出しました。報告では、インターネットが情報へのアクセスの優れたツールであると同時に、憎悪と偽情報の場となることを踏まえて、ソーシャル・メディアなどのプラットフォームを提供する企業が、ユーザーが発信するコンテンツの監視をするにあたり、どのように表現の自由など人権を保障するのか、また国家がどのように規制をするのかについての枠組みを提案しています。
 報告は、国家がコンテンツの規制について、検閲を行ったり、「過激主義」「フェイクニュース」などを理由に広範な規制を行っていること、また企業にコンテンツをモニターし、違反する情報を直ちに削除することを義務付けていることなどについて懸念しています。また、インターネット企業のコンテンツに関する方針や基準などがあいまいで、不透明であることが多く、実施が一貫していないことを指摘しています。勧告として、国家に対し、表現に対して刑罰を科す、または不当に制限する法律を廃止すること、企業にコンテンツの適否の判断の責任を委ねるような方法を回避することなど、情報通信技術企業に対して、コンテンツを国際人権法に照らして見直すこと、ルールの策定や運用を通して透明性を確保すること、業界としての説明責任のための手続きを設置することなどをあげています。
 人権理事会は、インターネット上の人権の促進、保護と享受に関して決議を採択し、そのなかで、各国にすべての人にとって、差別なく、安全に参加できるオンライン環境をつくることなどにより、ジェンダーによるものも含め、デジタル格差を是正すること、安全保障上の対応を国際人権上の義務にそって行うこと、ジャーナリストが不当な介入を受けずに活動できる安全なオンラインの環境をつくることなどを求めています。
 
市民社会組織、人権擁護者の保護
 今会期においても、複数の国が国連などの国際機関に情報提供しようとした活動家やNGOに対する脅迫や 攻撃について懸念を表明し、市民社会の空間(国際および地域組織との関与に)関する決議が採択されました。決議は、国連の目的を達成するために市民社会が国内、地域および国際レベルで果たしてきた役割を認め、人権の促進、平和的な対話、多様な民主主義をつくるにあたっての市民社会と人権擁護者の貢献を歓迎し、人権を促進、擁護する人や組織が多くの国で脅迫、嫌がらせや攻撃を受けていることを懸念し、各国に、オンラインでもオフラインでも全ての人の表現の自由、集会や結社の自由を含む、市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利を尊重し、保護する義務を果たし、市民社会の活動家に対する脅迫、攻撃、嫌がらせや報復などを防止資するなど対応を求めています。
 また、閉会にあたり、理事会の議長は、理事会と協力した組織および個人に対する威嚇や報復の行為を拒絶し、各国にそのような行為を防止するよう促しました。
                         (構成:岡田仁子)
 
<出典・参考> いずれも国連サイト(英文)
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=23346&LangID=E
Human Rights Council concludes thirty-eighth session after adopting 20 resolutions July 6, 2018
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session38/Pages/ListReports.aspx
38th Session of the Human Rights Council: Reports
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session38/Pages/ResDecStat.aspx
38th Session of the Human Rights Council: Resolutions, decisions and President’s stateme

(2018年07月17日 掲載)