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第72回国連総会、マイノリティ権利宣言についてなどの決議を採択(2017年12月)

 2017年9月から開催された第72回国連総会は12月19日、マイノリティの権利宣言、人権擁護者宣言についてなど人権に関する決議を採択しました。

マイノリティ権利宣言に関する決議-ヘイト・クライムやヘイト・スピーチの拡大に対して
 国連総会は1992年、各国の領域内の民族的(national、あるいはethinic)、宗教的および言語的マイノリティの存在とそれぞれの民族的アイデンティティを保護し、適切な立法やその他の措置をとることを掲げた「民族的又は種族的、宗教的及び言語的少数者に属する者の権利に関する宣言(マイノリティ権利宣言)」を採択しています。宣言は、マイノリティが自己の文化を享有し、宗教を信仰し、言語を使用する権利、自己の文化的、宗教的、社会的、経済的、および公的活動に参加する権利などを有していることを確認し、国家に、マイノリティが差別なくその権利を享有できるための措置をとるよう求めています。
 宣言採択の25周年に当たり、総会は各国に対し、民族的・宗教的マイノリティが直面する、ヘイト・クライムやヘイト・スピーチの増加などの課題について考え、マイノリティ集団に帰属する人の平等で実効的な参加のもとで、宣言を実施する措置をとるよう決議しました。また決議では、マイノリティ集団に帰属する人に対して差別的、または不均衡に不利な効果をもつ法律、政策または慣行を見直し、マイノリティに対する暴力を防止し、民族的、宗教的憎悪の扇動を強く非難し、国際的に認められた人権および基本的自由を尊重しながら、国籍、人種、宗教または信念に基づく切迫した暴力の扇動を犯罪化する措置をとることを求めています。加えて、暴力を受ける危険がある、または暴力を経験したマイノリティ集団の子ども、ジェンダーに基づく暴力にさらされるマイノリティ集団の女性を保護し、マイノリティ集団の高齢者や障害のある人の状況に注意を払うことなどを盛り込みました。

人権擁護者に関する宣言に関する決議
 「普遍的に認められた人権及び基本的自由を伸長及び保護する社会の個人、集団及び機関の権利及び責任に関する宣言」(人権擁護者宣言)は、世界人権宣言50周年の1998年、国連総会で採択されました。宣言は、個人、集団、機関やNGOには民主主義を守り、人権および基本的自由を伸長する重要な役割と責任があるとし、国内および国際レベルにおいて個人で、または他の人と共同で、人権および基本的自由の保護と実現に向けて取り組むこと、人権の保護・促進のために平和的に集まり、NGOなどを結成し、またはNGOに加わり、人権に関する情報を求め、発信し、意見を保持し、注意を喚起すること、政府機関に対して意見や提言を提出することを確認しています。

 また、人権侵害に対して個人、または他の人と共同で平和的な行動に参加すること、人権および基本的自由の平和的な保護・促進の目的のために資源を求め、それを受け取ることなどの権利を確認しています。さらに、宣言にあげられた権利の行使に対するいかなる暴力、威嚇、報復、法的または事実上の差別、圧力、その他の恣意的な行動からも、権限のある当局によって実効的に保護されるよう必要な措置をとることを国家に求めています。
 2018年にこの宣言の20周年を迎えるに当たり、今次72回総会で採択された決議は、多くの国で人権擁護者が脅迫や攻撃を受け、表現の自由、集会や結社の自由、プライバシーの権利などを制限され、人権に関連する国連や他の国際機関との協力を妨げるような威嚇や報復を受けているなどと報告されていることに深く懸念し、表現の自由、集会や結社の自由を行使する、人権擁護者を含むすべての人の権利と安全を確保するために必要な措置をとるよう各国に呼びかけています。また、人権侵害に関する情報を求め、報告しようとする、人権擁護者を含む個人やその家族などに対する暴力、威嚇、拷問、強制失踪及び殺害を強く非難しています。決議ではさらに、2018年の総会において、宣言の実施を促すためのハイ・レベル会議を開催するとしています。

特定の国家の人権状況に関する決議
 北朝鮮、イラン、ウクライナのクリミア自治共和国、シリア、およびミャンマーの人権状況に関する決議が採択されました。北朝鮮の人権状況に関しては、重大な人権侵害が継続していること、国連の特別報告者に対して入国や協力を拒否していることを懸念し、拉致、強制失踪、およびその被害者の帰国の拒否を非難し、改善を促す決議が無投票で採択されましたが、キューバ、イラン、ベネズエラなど複数の国がコンセンサスに加わらないと表明しました。ミャンマーの人権状況に関しては、同国ラカイン州のロヒンギャに対する攻撃などにより、多数の人がバングラデシュに逃れていることをあげ、ロヒンギャやその他の少数民族に対する軍事行動を止め、被害を受けた共同体が国連などの人道支援に妨げられることなくアクセスすることを認めるよう求め、各国にバングラデシュ及びミャンマーに対する人道支援の提供を援助するよう促し、人権理事会の特別報告者とは別に、この問題に取り組むミャンマー政府を支援する事務総長の特別使節を任命することを決議しました。

 総会ではそのほかに、食料の権利、安全な飲料水の権利、ジャーナリストの安全、国内人権機関などについての決議が採択されました。
                          (構成・岡田仁子)

<出典>
・General Assembly Adopts 59 Third Committee Draft Resolutions, Defers Action on 4 Closely Watched Texts, amid Discord over Agreed Language、GA11993、2017年12月19日、
https://www.un.org/press/en/2017/ga11993.doc.htm 
・第72回総会決議 http://www.un.org/en/ga/72/resolutions.shtml 

(2017年12月28日 掲載)