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第5回「国連ビジネスと人権フォーラム」でのジョン・ラギー教授による基調講演の日本語訳が完成しました

 2016年11月14日から16日まで、スイス・ジュネーブで第5回「国連ビジネスと人権フォーラム」が開催されました。既報のとおり、5回目となる今回は日本からも多くの参加者があり、日本政府の「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」作成の言明なども含め、数多くの議論がなされました。
 その中で、ひときわ注目を集めたのが、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の策定で中心的な役割を果たしたジョン・ラギー教授による冒頭の基調講演でした。
 ヒューライツ大阪では、公開されている基調講演のテキストを、ジョン・ラギー教授及び国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)の了承を得て日本語に翻訳しました。基調講演全文を末尾のPDFリンクからダウンロードできます。

 この基調講演では、グローバル化がネガティブな帰結に至ることに警鐘を鳴らした上で、「ビジネスが持続可能な開発への貢献を最大化するためには、持続可能な開発の人に関わる部分の核心において人権の尊重を促進する努力をしなければならない」として、「持続可能な開発目標(SDGs)」と「ビジネスと人権に関する指導原則」の関係性について、次の5つの「懸念」を示しながら語られています。

  1. SDGsを採択した国連の総会決議では、人権に関する基準や合意が簡単に触れられているだけであることから、ビジネスが人権尊重のための基準よりも、とにかくSDGsに取り組むことの方が重要と思い込んでしまうことが懸念される。
  2. SDGsに貢献するための企業の取組みの多くが依拠するCSVパラダイムは、法と倫理基準の遵守とビジネスが及ぼす害の軽減を前提とする、とのポーターの言にもかかわらず、そうした前提が実現されていない現実が顧みられないことが懸念される。
  3. SDGsの17項目のうち、都合のよいものだけを「いいとこ取り」する傾向が懸念されるが、このことは、マテリアリティの考え方において、人権に対して害を及ぼすリスクの重要性よりも、ビジネスにとってのリスクと機会の重要性が優先されがちであることと関連している。
  4. 人権尊重責任の考え方を、変革をもたらすものとして正しく理解すべきで、SDGsによって「責任から機会へ」とビジネスモデルが「成熟」し、変革をもたらす、といった、SDGsに取り組む戦略提案の一部に見られる言説が懸念される。
  5. 人権尊重は実はきわめて肯定的/積極的(positive)な取組みであるのに、人権尊重はただ単に負の影響を取り除くという否定的/消極的(negative)なもので、人権の促進に貢献しようとする自発的で肯定的/積極的(positive)な取組みには結びついていかない、とする考え方は、誤った二元論に基づいていて懸念される。

 こうして、positiveとnegativeを対置させながら5つの「懸念」が示されたあと、指導原則の重要な要素である、自社事業だけでなくバリューチェーン上の関係先にまで、状況を改善させる「影響力」を企業が持ちうるということが、「持続可能な開発のアジェンダの人に関する部分でビジネスが最も貢献できる」ことの一つであるとされます。
 そして最後に、SDGsの多くの目標に人権尊重は具体的に関係しており、positiveな効果を得ることができること、人権尊重は持続可能な開発の人に関わる部分の核心にあり、それによって確保されるべき社会的に持続可能なグローバル化は、その恩恵に浴すべき人びとの生活にpositiveな影響をもたらすとともにビジネスの受益にもなることが語られます。

<参照>

(2016年11月28日 掲載)