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知りたい!人権Q&A

国内的な人権保障に関するもの
日本国憲法は外国人の人権を保障していないのですか?

Answer

 まず、人権という言葉は、人間が人間であることから当然に有する権利を意味します。したがって、日本国憲法が「基本的人権」を定めていることは、外国人の人権も原則として保障しています。このことは、明治憲法が「臣民の権利」を定めていたのとは違います。臣民とは、帝国臣民、すなわち当時の天皇主権下の国民を意味し、明治憲法は、外国人の人権を保障していませんでした。日本にかぎらず、19世紀につくられた憲法では、一般に、外国人の人権を保障する必要はないと考えられていました。なぜならば、国と国との戦争が多く繰り広げられていた時代、ナショナリズムの高まりを反映して、国民を味方、外国人を敵と考える見方が当時は一般的だったからです。また、明治憲法は、厳密には、国民の人権も保障しておらず、人権とは違う、臣民の権利は、法律しだいで保障されたり保障されなかったり自由に決めることができるとされました。国会が治安維持法という法律をつくれば、言論の自由や結社の自由の保障は、大きく制限されました。
 
 これに対して、日本国憲法が定める人権は、国会や政府による人権侵害に対しても、裁判所が憲法の番人として、違憲審査制により、人権違反の法律や命令を無効とすることができるようになっています。日本にかぎらず、第二次世界大戦後につくられた憲法は、一般に、人権を保障しています。その背景には、政府のまねいた戦争の惨禍への反省や、人を人として尊重しないナチスのホロコーストに代表される人権侵害への反省があります、18世紀につくられたフランスの人権宣言やアメリカの権利章典にみられた人権という考え方が、世界的に広まるようになり、第2次世界大戦後は、人権のルネッサンスの時代と呼ばれています。同時に、一国の憲法だけで人権を保障するものではなく、今日の人権保障は、国連を中心に国際的に保障するという考え方も一般的になっています。
 
 日本国憲法は、第二次世界大戦後の憲法として、人権の普遍性と国際協調主義を理由として、日本に在留する外国人の人権も原則として保障しています。最高裁判所が1978年のマクリーン事件判決の中で、こうした考え方を判例として定着させました。そこでは、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」と言っています。憲法の文言ではなく、権利の性質により、外国人の人権保障を導くこうした解釈は、学説上、性質説と呼ばれています。今日、ほとんどの学説は、この性質説を基本としています。しかし、日本国憲法制定後、当初は、明治憲法の影響を受けて、外国人には人権は保障されていないという説もありましたし、「国民は」ではじまる人権規定は外国人には保障されず、「何人も」ではじまる人権規定だけが外国人に保障されるという文言説の見解もみられました。しかし、憲法をつくる際に、どのような人権が外国人に保障され、どのような人権が外国人に保障されないのかをきっちり議論したわけではありません。そこで、文言を手掛かりにすることが現実に合わず、権利の性質で判断する考え方が通説となっています。権利の性質を判断する上では、諸外国での外国人の人権保障や国際的な人権条約での外国人の人権保障のあり方が参考になります。
 
 したがって、日本国憲法14条が国民の平等権を定めていても、性質上、外国人にも保障されるべき人権と考えられております。合理的な理由なしに、外国人と国民とを異なって扱うことは憲法違反となります。権利の性質は、社会の発展に応じて外国人と国民との権利保障の違いを少なくする方向にあります。かつて、社会権は国民のみに保障される権利と考えられましたが、今日の福祉国家では、外国人にも保障されつつあります。

(近藤 敦)

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