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  4. 凶悪な犯罪者には人権なんていらないんじゃないの?

知りたい!人権Q&A

人権の概念や内容に関すること
凶悪な犯罪者には人権なんていらないんじゃないの?

Answer

  1. 人権はすべての人に保障される普遍的な権利です
     何人もの人を殺したような凶悪な犯罪者は、他の人の人権を著しく侵害したのだから、人権を保障されなくてもいいのでしょうか。決してそうではありません。人権は、すべての人が生まれながらに持っている、侵してはならない普遍的な権利であり、凶悪な殺人犯でも人権を主張することができます。日本国憲法第36条、自由権規約、拷問等禁止条約は、拷問や残虐な刑罰を禁止していますが、それは凶悪な殺人犯も、拷問による取り調べや残虐な刑罰を受けない権利を持っていることを示しています。
  2. 人権は市民から国家に対する自由の主張です(国家VS市民)
     そもそも人権は、市民が国家に対して、抑圧・干渉の排除と自由を主張することから始まりました。国家権力の一方的な判断により、市民の権利や自由が奪われることがないように、犯罪の内容と刑罰をあらかじめ法律に定めておくことにしました。(罪刑法定主義)。さらに、逮捕から裁判に至る刑事司法のすべての場面で、適正な法の手続き(due process of law)を保障しています。(日本国憲法第31条~第40条)
  3. 社会不安と厳罰化・防犯強化の大合唱(犯罪者VS被害者)
     マスコミで犯罪の凶悪化が報道され、再犯の増加と刑務所の過剰収容が指摘されるたびに、社会不安が広がっています。地域社会では、防犯体制の強化が叫ばれ、刑事裁判は、まるで加害者(犯罪者)と被害者の対決の場のようです。これでは、国家刑罰権が限りなく拡大し、歯止めのない厳罰化が進んでしまいます。先に述べたとおり、刑事裁判とは、社会秩序の維持・回復の場であるとともに、市民が国家に対して恣意的な抑圧や自由を侵害しないように主張する場でもあります。やはり、人権の普遍性による国家刑罰権の制約が重要です。
  4. 再犯者の実像~塀の中から社会が見える(犯罪者VS市民・地域社会)
     社会に多大な脅威と被害をもたらす再犯者(再入者)とは、実はどんな人たちでしょう。最近の傾向として、高齢者の再入者が増加し、いちばん多い罪名は窃盗犯、再入者時に無職であった人が7割もいます。矯正施設にいる知的障害者の実態調査(2006年、15施設のサンプル調査)では、受刑者数27,024人のうち、410人(1.5%)が知的障害者またはそれを疑われる者であり、療育手帳所持者はわずか26人(6%)でした。社会的排除と社会保障のまずしさが、社会的にもっとも弱い立場の人々を刑務所に隔離し、社会復帰をこばんでいます。刑を終えて出所する人たちを地域社会がどのように受け入れるか。国や地方自治体の人権基準と市民の人権意識が問われています。

(阿部寛)