反人種主義・差別撤廃世界会議にむけたアジア地域準備会議(政府間会議)およびNGOフォーラムの概要報告(日程に沿って)



I. NGOフォーラム

日程/2001年2月17日〜18日

場所/政治・国際問題研究所(Institute for Political and International Studies [IPIS])

参加者数/約220人(イラン国内団体を含む)


第一日目 2月17日

午前

1 全体会

2 開会セレモニー

・はじめに ニマルカ・フェルナンド(アジア地域調整委員会事務局)より

・イランの子どもたちによる歌の発表

・開会あいさつ

1)ODVV(現地主催団体)代表

2)イラン外務省

3)国連人権高等弁務官事務所代表

 イラン政府、現地組織団体への感謝の言葉とともに、これまでの世界会議のためのプロセスを述べた。過去二回の世界会議とは異なり、世界会議のタイトルからもわかるように、より広い議題を扱う。各世界地域によりそれぞれの特徴がある中で、アジアも加わり、世界的な基準を示すこととなる。また世界会議そのものだけではなくその前後のプロセスが大切である。国連だけではなく各地域が行動指向となり、すべての分野で共に闘わなければならない。今後、3月にはオープンエンドのワーキンググループで世界会議の宣言草案が作成される。5月には第二回準備会議がジュネーブで行われる。そして8月のダーバンでの世界会議へとつながる。人権高等弁務官事務所では世界会議のプロセスへのNGOの参加を制約のある中でも促進しベストを尽くしてきた。

 

・ブリーフィング ローリー・ワイズバーグ(世界会議NGO連絡担当官)より

 この場にあつまった新しいNGO、イランのグループ、国連関係者。NGOはいったい何ができるだろう。このアジアの集まりを終えた後、4つの準備会議、各地域の専門家会議、NGOレポートなどのすべてが、インターセッショナル会議にてまとめて検討される。過去を振り返るとNGOの発言が取り入れられそのロビーイングはやりやすくなった。政府や国際機関だけでは取り組みに限界があり、市民社会、NGO、学術研究機関、民衆団体などの協力は不可欠になっている。NGOの参加を促すための資金援助の意義は大きい。人権高等弁務官(メアリー・ロビンソン)は世界会議を単なるベンチマークだけで終わらせたくないと発言している。つまりその後の行動計画やモニタリングの重要性を強調している。また、ヨーロッパでのロマやダリット(被害者)が声を上げるとともに、差別への運動、動員は高まっている。若者、被害者の動員は重要だ。

 

3 パネルディスカッション

4人の発題と討論

1)インド、カースト差別

 インド西部地震の犠牲者に黙祷を行ったのち、発題者はインド政府の世界会議の議題にカースト問題を含めることに反対する姿勢について批判した。昨年6月の国連人権小委員会による世系(門地)と職業に基づく差別についての決議を引き合いに出した。

 

2)マレーシア、移住労働者への差別

 発題者はマレーシアの「制度化された人種差別」について、今起こっている現象はモスリムであることが原因ではなく移民であることにより差別が起こっていると主張、プロジェクターで写真を見せ、ひどい暴力をうけた被害者の例をあげ訴えた。バングラデシュからの移住労働者は「バングラ」と呼ばれ見下されている。また、ダリットへの差別、HIV感染者・エイズ患者への差別に言及し、国連条約の実施を訴えた。また、グローバル化に抵抗するためには、不干渉の政策、地域社会ベースの政治が必要であること、考え方の枠組みとして平等、尊厳、公正の三つが柱となるべきだと訴えた。

 

3)アラブ地域から

 アラブ地域からの発題として、パレスチナほかシリアやレバノンの占領地域における差別、独立国家としての自決権、女性の複合差別、グローバル化の弊害、イスラムの誤った解釈、国外追放者への差別、処刑、家事労働者への差別などを訴えた。またアジア全域との連帯、アンマン会議の結果についても触れた。

 

4)先住民族の代表

 先住民への扱いについての過去の流れをふりかえり、もっとラディカルな解決法の必要性を訴えた。先住民族の歴史とおかれている状況、植民地化による犠牲、アイデンティティーの否定の他、多国籍企業、鉱山、ダムプロジェクトの性格、アグリビジネス、遺伝子操作、資源保護プログラム、エコツーリズム、製薬会社のパテント(特許)、同化政策、多数派宗教の影響、自決権などについて言及した。勧告として、「peoples」の使用、権利保障措置の実施(奪われた土地の回復など)、環境破壊防止、脱軍事化、そして永続的なフォーラムの設置(生物の多様性、制度化された人種差別などの検討)を提示した。(参照レポートあり)

 4人の発題のあと会場参加者からの意見を受けての討論がおこなわれたが、カースト問題についてインドの参加者の一部から世界会議にカースト問題を入れることに反対する意見が出て、もっとも大きな討論となった。

 

昼食休憩

 

午後

ワークショップ

6つのテーマに分かれてのワークショップ(分科会)

1)ジェンダーと人種主義
2)移住と人身売買
3)カースト
4)国内(民族/宗教)マイノリティー
5)先住民族
6)グローバル化と人種主義

 各ワークショップでは、ファシリテーターが進行し、キーとなる問題とワークショップの決議文書の中身が話し合われた。

 

第二日目 2月18日

午前

1 ワークショップ報告(まとめの文書の提案)

1)ジェンダーと人種主義
2)移住と人身売買
3)先住民族
4)グローバル化と人種主義

 各報告、文書提案の後、会場からの質問・意見、文書への追加などの提案が出された。

 予定の時間が超過したため、残りの2つのワークショップ報告は午後に回された。

 

2 Sangoco(南アフリカのNGOフォーラム現地主催団体)によるプレゼン

 実施計画の提案(開催日程、認証、展示、通訳、申し込み登録、ビザ取得、宿泊、事務局などの説明、ロゴ紹介など)、実行委員会組織とプロセスの提案が行われたあと質疑応答と参加者からの追加提案が出された。

開催日程/NGOフォーラム 8月28日〜9月1日、世界会議(政府間会議)8月31日〜9月7日(二日間の重なりがある)

会場/NGO会議と政府間会議の会場は近く、共に宿泊先から歩いていける。

通訳/多言語(国連言語)で用意

認証/NGOフォーラムのみは必要なし、政府間会議の認証は国連へ申請。認証でいえば、アジア・アフリカ地域のNGOの認証がアメリカ、ヨーロッパ地域に比べて少ないのは問題。もちろん参加NGOの数が問題ではなく最終文書へのインパクトが重要であるが。

展示スペース/ホームページで説明している。その他の有用なスペースとして団体の発行する書籍を並べるスペースを無料で提供したいと考えている。

登録申し込み/民間会社に委託している

独自の事務局の用意/3月1日から配置

ロゴ紹介/陰と陽(黒と白)はアパルトヘイトの闘いを表す、周りを囲むカラーはオリンピックカラー

NGOフォーラムのプロセス説明

 国内集会、ワークショップ他〜世界地域独自の集会と文書〜2月25〜26日〜南アフリカの委員会で集約〜6月、国際調整委員会(各地域のNGO調整委員会の集まり)、討論文書、プログラムの検討

プロセスのマネジメントの説明

 全体会とパネル〜ワーキンググループ〜ワークショップ〜コーカス〜報告者組織の単位で。しかしこれはあくまで提案段階である。

 この後、プレゼンを受けての質問、意見が出された。

・青年のための取り組みや女性のための取り組みを検討していないのか。
・アフリカの和解プロセスを他地域が学ぶことができる取り組みをしてほしい。
・ダーバンにおいて各地域独自の集会、アジアであればアジア独自の集会ができないか。展示も含めて。
・資金不足をサポートする計画はないか。
・プロセスをわかりやすく、何が起こっているのか、どう進行しているのかわかりやすくしてほしい。
・特にアフリカではHIVエイズの問題、差別問題は含まれるべきである。
・メディア戦略を

など

昼食休憩

午後

全体会 2:50

1 ワークショップ報告(まとめの文書の提案)(つづき)

5)マイノリティ
6)カースト

 提案のあと、会場からの意見発表ではインドの参加者からカースト問題を議題に含めるべきではないとする意見が出され、それに対する反発により途中討議が紛糾し騒然となった。

2 決議文の提案

 ワークショップの枠組み以外に、グループまたは個人による8つの決議文が発表され、それらがフォーラムの最終文書に盛り込むことが確認された。

休憩

3 最終セッション

・政府間会議についての事務的連絡(日程、時程など)

・ドレスコード(女性への服装規定)について

 NGO連絡担当官より、ドレスコードについてのコメント。ドレスコードに従うことがビザ取得の条件になっていること、また、反発によってイランの団体(NGOフォーラムのホストであるODVVやその他の団体)への影響が心配である。

・NGOのための施設(会議場など)について

・人権高等弁務官(メアリー・ロビンソン)との対話について

・NGOの発言機会について

・NGO声明文について

・調整委員会の構成メンバーについて

 ニマルカ・フェルナンドよりコロンボ会議からの経緯の説明。メンバーの紹介(口頭で読み上げ)。4月に予定しているカトマンズ(ネパール)でのNGO会議ではイシュー(問題)と地域(小地域)を考慮して資金援助を行う団体を振り分けたい(ただし日本は金持ち国なので一団体のみ)

・現地事務局団体ODVVへの謝辞

・会場参加者からの質問・意見

 NGOの最終文書(声明文)については、フォーラムの進行が遅れたため、最終文書の決定は翌日19日の政府間会議の午前中までに行うことが事務局より伝えられた。

 

 

II. 反人種主義・差別撤廃世界会議アジア地域準備会議(政府間会議)

 

日程/2001年2月19日〜21日

場所/イラン国際会議センター(Iranian Centre for International Conferences)

参加/アジア地域の国連加盟国代表、オブザーバー(他地域の加盟国、専門機関代表、国連機関、国連人権条約機関、特別報告者、政府間機関、国内人権機関、その他組織)、非政府組織(NGO)、約400人(推定)

 

第一日目 2月19日

午前

1 開会セレモニー

スピーチ

・イラン外務大臣(参照原稿あり)
・国連人権高等弁務官 メアリー・ロビンソン(参照原稿あり)
・南アフリカ外務大臣
・ヨルダン国王(参照原稿あり)
・国連人権委員会委員長

休憩

2 議長、副議長、報告者の選出

3 議題と会議進行規定の若干の修正およびそれらの採択

4 信任委員会、草案委員会の選出

昼食休憩

午後

1 全体会

・その他政府代表あいさつ
・他地域の準備会議の報告(ヨーロッパ地域はイタリア、アメリカ地域はチリの代表による)
・一般討議

(上記に並行して、NGOのための会議場では、午後2:00より、メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官とNGOの対話が約1時間にわたって行われた)

2 一般討議(実質はレポートの発表のみで、傍聴した範囲ではレポートに反応しての討議はなかった)

各国政府代表の発表(スリランカ、トルコ、中国、インドネシア、フィリピン)

(並行して、NGO会議室ではメアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官とNGOの対話に引き続いて、イラン国内NGOとの対話の取り組みが行われた)

 

第二日目 2月20日

午前

1 一般討議

各国政府代表の発表(パレスチナ、イラク、インド、アラブ首長国連邦、シリア、タイ)

(並行して、NGO会議場ではNGOの発言機会について、方法と戦略を討議するためのNGOグループの集まりがもたれた。戦略として退場による抗議行動も検討されたが、議論を重ねた結果、最終的には一時間の時間を使って全体的な声明の発表と各ワークショップのまとめの文書を発表し、妨害などが起こった場合には退場することを決めた)

休憩

2 一般討議

各国政府代表およびその他の機関のオブザーバーからの発表(大韓民国、ネパール、ラオス、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国、マレーシア、バングラデシュ、国際移住機構、赤十字国際委員会、国際労働機関、人種差別撤廃委員会委員長、移住についての国連特別報告者)

昼食休憩

午後

1 NGOの発言

 ニマルカ・フェルナンドによる全体的な声明文の発表とNGOフォーラムでの6つのワークショップのグループの代表によるテーマごとのまとめの文書とその他の問題についての意見発表が行われた。時間は1時間が割り当てられたが、途中進行が遅れ議長によって発表者に時間短縮が再三促された。最終的に約1時間でNGOによる発言は終了した。

2 一般討議

 各国政府代表およびその他の機関のオブザーバーからの発表(ベトナム、モンゴル、アフガニスタン、カタール、レバノン、カンボジア、国連難民高等弁務官事務所、アジア・太平洋国内人権機関フォーラム、国連人権小委員会、表現の自由の国連特別報告者、スーダン代表)

第二日目予定セッションを終了。予定より早く議事を終了したため、翌日の予定が変更され、午後3:00からの最終セッションとなった。しかし、その後、再度予定が変更され、第三日目の午前に最終セッションを行うことが連絡された。

 

第三日目 2月21日

午前

全体会

・信任委員会報告提出

・草案委員会報告提出

・宣言および行動計画案の採択

・インターセッショナル会議および世界会議第二回準備会議(PrepCom)についての連絡

終了

政府間会議の終了後、NGO会議室において、NGO全体のふりかえりの集まりがもたれた。ここで、今回のNGOサイドの政府間会議に対する働きかけ、影響を及ぼす戦略、ロビーイングなどについての批判、また、NGO運営(調整)委員会の事務局としての働きへの批判、メンバー構成や意志決定プロセス、透明性への疑問など厳しい意見が多くだされた。また、事務局を弁護する意見も出された。女性参加者への服装規定(スカーフ)についても再度議論が繰り返された。カトマンズでのNGO会議の開催時期、国連による会議との兼ね合い、ロビーイングの戦略、トレーニングの必要性、ホームページやメーリングリストによる情報の発信や共有の必要性などについて意見が出された。途中、昼食のため抜ける参加者もいたりしながら会議は2時間から2時間半にわたって続いた。

これらの意見を受けて、NGO運営(調整)委員会はこの日の夜に最終的な打ち合わせを行っている。

(政府間会議とNGOによる会議、集まりは並行して行われたため、傍聴できなかった政府間会議の発表者については最終日に出された報告文書を参照した)(文/ヒューライツ大阪・川本)


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