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最高裁判所が凍結精子による夫の死後生まれた子どもの認知を認めず

 9月4日、最高裁判所は、夫の死後、冷凍保存した夫の精子を用いた体外受精により生まれた子どもの死後認知を求めた訴訟で、認知を認める高裁判決を破棄しました[PDF160KB]。本件では、不妊治療中、夫が骨髄移植を受けることになったため精子を凍結保存しましたが、夫は治療再開前に死亡していました。
 二審の高松高裁は、認知請求を棄却した地裁判決を取り消し、父子関係を認める判決[PDF154KB]を出していました。高裁判決は人工受精による場合の認知請求には、「認知を認めることを不当とする特段の事情が損しない限り、子と事実上の父との間に自然血縁的な親子関係が存在することに加えて、事実上の父の当該懐胎についての同意が存すること」という要件が満たされていれば十分と述べ、認知の訴えが自然血縁的な親子関係その者の客観的な認定により法的親子関係を認定することを認めた制度であり、父が自発的にこの認知をしない場合、訴訟により法的な父子関係を形成するものであるとして、懐胎時に事実上の父が生存していることを要件とすることはできないと判断していました。一方、保存精子の利用の場合、本人の意思に関わらず、予想外の重い責任を課すおそれがあるため、懐胎には父の同意が必要であるとし、本件では、その同意があったと判断していました。
 最高裁判決はそれに対し、現行民法が父親の死後に懐胎した子との親子関係を想定しておらず、親権、扶養・養育、相続などの親子関係の基本的な法律関係の生じる余地がないものとして、そのような場合の親子関係を認める立法がない以上、法律上の親子関係の形成を認められないとしました。また、補足意見において、このような医療の進歩によって法律のない領域に生まれた子どもについて、法律上の親子というものに関する様々な価値や法体系上の調整が求められるとして、司法機関が独自に認められないと述べました。また、生まれてきた子どもの福祉を第一に考慮すべきであっても、このような場合、親子関係の形成が子どもの福祉にとって余利益がなく、むしろ血縁関係と親の意思のみを根拠に親子関係を認めることは、懐胎時に父親のいない子どもの出生を放任することになると懸念し、早期の法整備を求めています。
 厚生労働省厚生科学審議会の生殖補助医療部会の「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」(2003年)では、急速な進歩の中で生殖医療の適正な実施のための見解をまとめていますが、精子の提供者が死亡した場合、提供の意思を撤回することが不可能となり、提供者の意思が確認できない、子どもにとっても、遺伝子上の親が出生時から存在せず、子の福祉にとっても問題があるなどの理由で、保存精子を提供者の死亡確認時に廃棄することとしています。また、法務省の法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会は、2003年に「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する要綱中間試案」を取りまとめましたが、この案では、夫の死亡後の凍結精子の利用に関して、医療法制による規制の考え方が不明確なまま、独自に親子関係に関して規定するのは不適当として、この問題について検討しないとしています。いずれについても、まだ法案化には至っていません。
 同じような事例で、2006年2月、東京高裁も保存精子による体外受精の場合はその都度同意が必要であるとして、認知請求を却下していました。

参考:
最高裁判所判決 2006年9月4日 [PDF 160KB]
高松高裁判決 2004年7月16日 [PDF 154KB]
・厚生科学審議会生殖補助医療部会 「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」
・法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会 「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する要綱中間試案」

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