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国連の活動

第6回アジア・太平洋地域における人権の伸長と保護の地域的取極に関するテヘラン・ワークショップ(イラン・テヘラン、出典『アジア・太平洋人権レビュー1999』)

1.「テヘラン会議」のねらい

 人権の伸長と保護に関する地域的条約も機関も存在しないアジア・太平洋地域に、ヨーロッパ、米州そしてアフリカと同様、地域的人権取極を設けるための国連の努力は、1982年のコロンボセミナーから1997年ヨルダンのアンマンで開かれたワークショップまで5回に及ぶワークショップを開催させるなど続けられている。そして1998年には、イランのテヘランにおいて第6回目のワークショップが開かれた。'98年2月28日から3月2日までに開かれた「テヘラン・ワークショップ」は、積み上げ方式による段階的推進を確認した「アンマン会議」の結論に基づき、①人権の伸長とりわけ経済的、社会的および文化的権利、②発展の権利の実現、③人権教育の効果的実施方法の開発、④人権分野における国内行動計画指針の研究、そして⑤共通の課題に関する協力戦略の開発などにおける国内人権機関の役割強化に、域内協力の焦点を絞ることが強く求められた。

2.「テヘラン会議」の経過

 テヘラン会議は、36の域内国家とパレスチナ当局そしてアジア太平洋国内人権機関フォーラムのほかに、域内人権NGOの参加とUNDPおよびESCAP の代表も出席して開かれた。会議は、イランの外務大臣と国連人権高等弁務官のあいさつで始まり、地域協力に関する課題について報告と討論が行われた。

 会議は、①域内の国内人権保障能力の向上における経験と実践、②地域的取極の進展に関する展望と次にすすむべき段階、そして③域内の技術協力計画の開発の3つの課題ごとにセッションを設けて進行された。これらの課題をめぐる議論では、「アンマン会議」の結論を踏まえ、人権の普遍性と不可分性そして相互依存性、アジア・太平洋の地域的取極は地域の内発的なものであり、域内で確認される優先順位と必要に基づくべきであること、さらには、地域取極は域内の文化的、歴史的および宗教的多様性と豊かさに留意すべきであることが主張された。また、過去のワークショップでも見られた地域取極設立の拙速を戒め、多様なアジア・太平洋地域のすべての国に受け入れられる地域機関の設立は時期尚早であるとする議論と既存の他の地域取極は、いずれもアジア・太平洋地域にとってモデルになるものはなく議論することさえ尚早であるとする主張が見られた。

 以上のように、地域取極については慎重もしくは消極的な議論が大勢を占めたが、各国内の発展は次のような成果が紹介され評価された。つまり、①人権教育行動計画、②人権分野における国内行動計画、③立法上の改革、④国内人権機関の設立と強化、⑤国際人権文書の調印もしくは批准、⑥人権の伸長と保護におけるNGOの参加と寄与の増進、⑦技術協力のプロジェクト、そして⑧拷問の犠牲者に対する補償を含む人権侵害の犠牲者に対する救済の改善、などの発展が確認された。

 そして、地域取極の実現に向けて、国内保障能力強化を目的とする技術協力と域内の協力の推進が前提要件であることについては、参加国すべてが合意し、地域取極については、毎年開催される政府間会議が、国連人権高等弁務官事務所の支援を得て、今後とも中心的な役割を果たすべきことについてもコンセンサスが見られた。そして、今後のワークショップでは、人権教育とか発展の権利などのテーマ別の課題に関する議論を含むことにした。さらに、人権の伸長と保護に関する国家の能力を強化するために、①人権の保護と伸長および国家能力の強化に関する国内計画、②人権教育、③人権の保護と伸長のための国内機関、そして④発展の権利および経済、社会および文化の権利を実現するための戦略、など4つの分野における協力をすすめるために「アジア太平洋地域の域内技術協力計画枠組み」(Framework of Regional Technical Cooperation Programme in Asia and the Pacific) を設けた。なお、この「枠組み」(Framework)は、人権高等弁務官事務所の責任において、3年の期間と72万8500米ドルの予算で実施されることになっている。 

3.「テヘラン会議」の結論

 テヘラン会議は、それまでの会議と同じように、会議が終結した3月2日に概ね次のような「結論」(conclusion)を採択した。

 世界人権宣言50周年に際して、1998年2月28日から3月2日までに開催されたテヘラン・ワークショップは、豊かな文化、宗教および多様性を誇るこの地域における、人権の普遍性、不可分性そして多様性を再確認し;

 第1回世界人権会議から30年そして第2回世界会議から5年後に開催した本ワークショップは、「ウィーン宣言ならびに行動計画に対する誓約をも再確認し;

 マニラ、ジャカルタおよびソウルで開催された前回のワークショップに留意し、カトマンズおよびアンマンで達成した合意を基礎に前進するとともに、段階的かつ積み上げ方式に導かれたワークショップは、アジア太平洋地域における人権の保護と伸長に対するその責務を新たにし;

 メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官およびカマール・カラージ、イラン・イスラム共和国外務大臣が、ワークショップの開会祝辞のなかで、具体的行動を呼びかけたことに謝意を表し;さらに、

 人権の伸長と保護のために、地域内の協力と経験の共有により、かつ国内の諸条件に従って、国内の能力を開発し強化することに関与するため、ワークショップは、とくに以下の事項を発展するために「アジア太平洋の地域的技術協力枠組み」を採択する(枠組みによる協力事項については先に触れたので省く)。

 人権の伸長と保護を向上とする具体的行動にねらいを定めたこの地域的技術協力枠組みは、世界人権宣言50周年に際しワークショップの寄与を記すものである。

(金東勲/龍谷大学法学部教授)