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1996年の国連の動き

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 国連ではさまざまな人権関連の活動が行われた。ここでは、主として1996年中に発行された資料にもとづき、その概要をアジア・太平洋地域に関連した部分に焦点をおきながら紹介する。

1996年の国連の動き

1 国連人権委員会

 国連の人権に関する最大の意思決定機関である国連人権委員会は、1996年から開催時期が変更された。これまでは1月末から2月にかけて開催されていたが、1996年の第52会期では3月18日~4月26日へと変更されている。期間は変わらず6週間である。なお、今回の人権委員会 の開会にあたり、初めて国連事務総長が挨拶を行った。人権委員会は、合計で85の決議、14の決定を採択し、経済社会理事会での採択のための5つの「決議 案」および42の「決定案」を採択した(E/1996/23-E/CN.4/1996/177)。

(1)1503手続による非公開の人権状況の審議

 第52会期では、10カ国の人権状況が取り上げられ、そのうちアジア・太平洋地域の国としてはネパールとタイがあったが、両者とも審議の打切りが決定さ れたという1)。なお、アルメニア/アゼルバイジャン、チャドについてはとく別報告者が任命されている。

(2)個別の国の人権状況に関する決議

 個別の国・地域の状況に関する決議は合計20採択された(表1)。
 アジア・太平洋地域については、アフガニスタンとミャンマー(ビルマ)に関する決議が採択された。中国の人権状況についての決議案は作成されたが、採択 にかけないという動議が27対20(棄権6)で通り廃案となった2)。カンボジアに関しては、国連人権センターのカンボジア地域事務所の活動をさらに強化 するよう呼びかける決議が採択された。
 東ティモールについては、決議はあげられなかったが、1995年と同様議長声明というかたちで人権状況の改善が求められた。

(3)国別の特別報告者(表2参照)

 第52会期には12の国・地域に関する報告が提出された。アジア・太平洋地域に関連するものとしては、アフガニスタンに関する特別報告者(白忠鉉)の最 終報告書(E/CN.4/1996/64)が提出された。また、ミャンマーについても総会任命の特別報告者(横田洋三)による報告書(E/CN.4 /1996/65)も提出された。
  これ以外にも、事務総長報告がいくつか提出されている。カンボジア(E/CN.4/1996/92)、東ティモール(E/CN.4/1996/56)、 パプアニューギニアとブーゲンビル(E/CN.4/1996/58)などに関するものである。
 また、国連人権センターが人権伸長の支援(技術協力)を与えている地域について、独立専門家が任命され、報告書が提出されるシステムがあるが、これによ りカンボジア(E/CN.4/1996/93)、グアテマラ(E/CN.4/1996/15)、ハイチ(E/CN.4/1996/94)についての報告が出されている。

(4)課題別特別報告者(または作業部会)

 第52会期には、14項目に関する課題別特別報告者(作業部会)の報告が出された。
にまとめたとおり、それぞれで各国の人権状況が触れられている。日本の「戦時下の性的奴隷(「従軍慰安婦」)」については、「女性に対する暴力、その原因お よび結果に関する特別報告者」の報告(E/CN.4/1996/53/Add.1)3)として提出された。

(5)人権基準策定

 人権基準策定は国連人権委員会を中心に行われる。現在、国連人権委員会では、次のような国際人権文書作成の作業を行っている。
・条約・選択議定書
・子どもの売買、子どもの買春および子どものポルノの防止に関する子ども権利条約選択議定書案
  この選択議定書案を作成するため、1994年から作業部会が設置され、第2回の作業部会が国連人権委員会開催前の1996年2月9日~3月22日に開催 された。現在は、一般的な議論と草案の作成を行っている段階である。
  1997年2月3日~14日に第3回作業部会が開催されている。
・子どもの軍事紛争への関与に関する選択議定書
  これは子どもの権利委員会が1994年に人権委員会に提出した草案をベースに1995年より別途作業部会を設け、検討を行っているものである。第2回作 業部会は1996年1月15日~26日、および3月2日に会合をもった。第52会期人権委員会に提出された報告(E/CN.4/1996/102)による と、現在は、一般的な議論と草案の作成を行っている段階である。第3回作業部会は、1997年1月20日から31日に開催される。
・拷問およびその他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約の選択議定書
  この選択議定書案は1991年にコスタリカ政府が提出したものがベースになっており、その目的は拘禁されている場所を訪問することにより、拷問の発生を 防止することにある。世界人権会議の行動計画でも、採択が呼びかけられている4)。1992年より人権委員会によって作業部会が設置されており、1995 年には、第4回の作業部会が10月30日~11月10日にかけて開催された。報告は人権委員会の第52会期にて提出された(E/CN.4/1996 /28)。同報告書には、第1~4回作業部会による第1読会の結果の文案も含まれる。第52会期においても、作業部会の開催が決定され、第5回作業部会が 1996年10月14日~25日に開催された。
・公正な裁判と救済についての市民的および政治的権利に関する国際規約の第3選択議定書
  1995年の第51会期においてこの選択議定書の必要性について、検討する作業部会の設置について第52会期で検討することを決めた。しかし、第52会 期においてはなんら進展はなかった。
・宣言
・国連先住民の権利に関する宣言
  「国際先住民の10年(1994年~2003年)」の期間中に国連総会で採択できるよう作業が進められている。国連人権小委員会の検討を終えた草案が 1995年の第51会期人権委員会に提出され、この際、人権委員会では、別に作業部会を開催し検討を進めることを決めた。同作業部会は61カ国の政府と 64の先住民族組織およびNGOの参加を得て、95年の11月20日~12月1日に開催されており、その報告(E/CN.4/1996/84)が1996 年の人権委員会に提出された。なお作業部会では、宣言についての全体的な議論がされ、個別の条文の読解には入っていない5)。なお、人権委員会は第52会 期、決議1996/38により1996年にもこのような作業部会を開催することを決定、これは10月21日~11月1日に開催された。報告は国連人権委員 会第53会期(3月10日~4月18日)に提出される。
・社会のなかの個人、グループおよび組織の、普遍的に承認された人権および基本的自由を伸長および保護する権利と義務に関する宣言案(「人権防衛者の権利 に関する宣言」)
  1984年より作業部会が設置され、この宣言の検討を進めてきた。1996年には、人権委員会の直前の3月4日~8日、および28日に第10回の作業部 会の会合が開かれた。第1読会は終了し、現在、第2読会を進めている(作業部会報告はE/CN.4/1996/97)。今回は、第3章1条~3条および第 4章2条を検討したが、結論には達していない。なお、第11回の会合が1997年の2月24日~28日にかけて開催される。
・その他
・人道に関する最低基準
  小委員会から提出された文書(E/CN.4/Sub.2/1991/55)をベースに、各国・NGOの意見を求めている段階(E/CN.4/1996 /80参照)である。
・国内避難民
  この課題については事務総長特別代表が検討を継続中(E/CN.4/1996/52)。特別代表の報告書の中では、既存の関連する法的基準の整理がされ ている。
・人身売買と売春からの搾取に関する行動計画案(E/CN.4/Sub.2/1995/28/Add.1)
  これは人権小委員会の現代的奴隷制作業部会で作業されてきたもので、人権委員会でも承認された。
・構造調整プログラムと経済的、社会的、文化的権利に関する政策ガイドライン
  このガイドラインを起草するための作業部会の設置が、第52会期にて決定された(決定1996/103)。第1回は1997年3月3日~7日に開催され る。これは、小委員会での研究報告(E/CN.4/Sub.2/1995/10)をベースに作業することになっている。

(6)発展の権利

 1993年に人権委員会が発展の権利に関し専門家から構成される作業部会を設置することを決め、同年11月に第1回の会合がもたれている。人権基準設定 のための他の作業部会は人権委員会メンバーは誰でも参加できる(オープン・エンディド)会議となっているが、この作業部会は15人の固定メンバーから構成 されている。第4回会合が1995年5月、第5回会合が9月~10月に開催された(報告はそれぞれE/CN.4/1996/10およびE/CN.4 /1996/24)。通常、この種の報告書は全会一致で採択されるが、第5回会合の報告書の内容については、キューバの作業部会メンバーからの強い反対が なされており、その反対意見も併記されている。

(文:川村 暁雄)

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