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用語の説明

国際人権規約

 国際人権規約とは「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)の2つ条約のことです。国際人権規約は1948年に採択された世界人権宣言の内容を具体的な法的拘束力を持つ条約として1966年12月16日に国連総会で採択されました。起草当時、ソ連などの社会主義諸国などが社会権と自由権に分けて、2つの条約を作ることに反対をし、1つの条約として『世界人権条約』を提案しましたが、最終的に社会権規約と自由権規約の2つに分けて条約がつくられました。国際人権規約と国際人権規約のそれぞれの選択議定書、世界人権宣言を合わせて、国際人権章典とよばれます。

人権規約図.jpg

社会権規約と自由権規約の全文
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/

(野沢 勇)

  • 1つの人権条約か2つの人権条約かの議論
    •  国際人権規約の起草作業は1948年世界人権宣言の採択直後に始まり、最初の国際人権規約草案が、人権委員会第5会期(1949年5月−6月)に提出されました。
       しかし、1952年まで1つの人権条約をつくるか、人権を社会権と自由権というカテゴリ別に分けて2つの人権条約をつくるかで議論がされました。この議論で主な論点となったのは、人権をどのように保障していくかでした。

      「社会権と自由権の性質」
       一般的に社会権ついては国家が人権を保障するために積極的に介入する必要があります。これに対して、自由権については国家、その他の組織や個人によって個人の人権が踏みにじられないようにすることで保障されます。このように、社会権と自由権の性質は違ってくると考えられています。

      「1つの人権条約の主張」
       社会主義諸国と発展途上国の多くは1つの人権条約をつくるべきとし、社会権と自由権は複雑に関係しているので、両者を同時に保障していかなければならないと主張しました。また、人権の性質によってカテゴリ別の人権条約をつくれば、人権の性質に優劣をつけてしまう恐れがあるとも主張して、1つの人権条約をつくるべきであると考えました。

      「2つの人権条約の主張」
       これに対して、西欧諸国を主とする国々は人権の性質を社会権と自由権のカテゴリ別にわけて2つの条約をつくるべきであると主張しました。社会権と自由権は人権の性質が異なってくるので、保障されるやり方も異なってくるという考えから、それぞれに合わせた人権条約をつくる方が良いとの考えでした。これは後の項目である、社会権は「漸進的」に保障していき、自由権は「即時」に保障していくという考えにつながります。
      最終的に、西欧諸国の主張が通り、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)誕生しました。
  • 漸進的義務と即時実施義務
    •  社会権規約の第2条「締約国の義務」には、社会権規約の権利を実現するためには「漸進的」に措置をとるとされています。つまり、徐々に社会権の実現をしていくということです。また、自由権規約には明文化されてはいませんが、一般的に「即時実施義務」というものがあります。自由権を保障するためには国家が個人の権利を妨げないようにすればよいのだから、すぐに実施できるという考えからです。

      「社会権規約の漸進的義務の捉え方」
       自由権の保障は即時実施義務ですが、社会権の保障は漸進的義務です。ただし、漸進的に社会権規約の内容を保障していくなかでも、最低限、保障されなければならない権利もあるのではないでしょうか。漸進的といって、いつまでも社会権の実現を遅らせているわけにはいきません。それどころか、先に国家が自由権規約の権利を優先させるべきであると考えれば、まるで、自由権規約の内容の方が大切な権利であるかのように捉えられてしまう恐れがあります。社会会権規約に書かれている権利も大切な人権です。
       この漸進的義務について社会権規約のもとで作られた社会権規約委員会がどのよう考えるべきか、意見を出しています。
       社会権規約委員会は、漸進的義務であっても、各権利の保障は最低限されなければならないと指摘しています。また、次のような権利が守られていなければ、締約国は人権の実施の義務を怠っていると考えられています。それは相当数の個人が不可欠な食料、不可欠な基本的健康の保障、基本的住居又は基本的な形態の教育の権利を確保していなければ、締約国としての義務を果たしていないと述べられています。この義務のことを核心的義務といいます。
       また、社会権規約に述べられている権利であっても、即時に守られなければならない権利もあります。例えば、第3条「男女平等」や第8条「労働基本権」などです。このように漸進的といってもいつまでも保障しないという意味ではありません。
  • 社会権規約と自由権規約の共通の条文
    • 「自決権」
       社会権規約と自由権規約には共通の条文があります。それは両規約の第1条「人民の自決権」です。第1条はすべての人民は自決権を有すると述べられています。自決権とは国家または人民が自らの政治的地位を自由に決定し、その経済的・社会的・文化的発展を自由に追求できる権利のことです。自決権はこれら権利を保障し、また、促進するためにとても重要なことなので両規約に入れられました。
      「非差別条項」
       両規約にはもう一つ共通の事柄を述べている部分があります。一文一句同じではありませんが、社会権規約の第2条2項と自由権規約の第2条1項は非差別条項といわれる規定です。この非差別条項は差別の禁止とともに平等の原則を述べており、国際人権規約の原則ともいえるものです。人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位が他の人と違うことによって、人権の保障が違ってはならないということです。
       また、両規約とも第3条で「権利の享受における男女平等」を述べています。この男女平等の原則は国連憲章の前文や世界人権宣言第1条と第2条にもその趣旨がのべられています。人類の歴史の中で長いあいだ女性の人権が保障されてきませんでした。この男女平等を述べた国際人権規約の第3条は非差別条項の中でも特に大きな存在意義があります。