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知りたい!人権Q&A

人権の概念や内容に関すること
人権とは「人間らしく生きるための権利」とよくいわれますが、権利とはそもそも何なのでしょうか?

Answer

まず、はじめに権利とは何か。


 ホッブズという哲学者は、「権利は、おこなったりさしひかえたりすることの自由」にあるといいます。つまり、「したいことができる」自由であり、「されたくないことをしない」自由である。「したいことやされたくないこと」とは、いいかえれば「人間の欲しているもの(こと)」である。だから権利とは、人間の欲しているもの(こと)の自由にある。
では、権利と自由は同じものなのか。これについて考えてみよう。
 

人権は近代の産物である

  権利は、英語ではRight。人権は、Human Rightsです。humanは、「人間らしい」という意味。だから、人権(Human Rights)とは、人間らしく生きるための権利といえます。
Rightが日本に輸入されたのは、幕末から明治初期にかけて。アメリカに渡った福沢諭吉は、アメリカ独立宣言(1776)を翻訳し、日本に紹介しました。「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という有名なフレーズを知っているでしょう。これは福沢諭吉の『学問のすゝめ』の冒頭の一句です。アメリカ独立宣言には、「すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる」とあります。権利は天(神)からの贈り物である。その福袋には、生命と自由、所有権と幸福に生きる権利が詰められている。これを天賦人権論、自然権という。自然権思想は、世界人権宣言や各国の憲法にも色濃く反映されています。
 では、太古の昔から誰でも権利をもっていたのでしょうか。歴史的に見ると、「人権」は17世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパで考え生みだされた思想です。ホッブズやロック、ルソーやカントなどの近代哲学者たちが深く熟考し練り上げてこしらえたものです。つまり、天や神からの贈り物ではなく、人間の創造物。いわば、人権は近代社会の産物なのです。ルソーは、権利は自然からもたらされないし、また暴力や権力も決して権利を生み出さないという。

権利と自由のちがい

 権利は、いったいどこから、どのようにしてもたらされるのでしょうか。この問題を、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソーの漂流記』を手がかりに考えてみましょう。絶海の孤島で独り28年間を過ごした人間の物語です。
 無人島でたった一人、自給自足で暮らしたロビンソン・クルーソーには、時折、自分を脅かす嵐や洪水、猛獣などの自然の諸力以外に、誰にも干渉されない自由があった。冒頭で述べたように、権利とは「したいことやされたくないこと」の自由にあります。
だったら、誰にも邪魔されずにひとり自由に生きるロビンソンにも権利があるではないか。
 では、もし、ロビンソンに天賦の権利があるとして、いったい誰に対してそれを主張するのでしょうか。誰もいないたった一人の世界で、はたして権利は意味をなすのでしょうか。自分の自由を邪魔する他人が誰もいないひとりぼっちの世界で、「俺の自由が侵害された」ということはできないのです。だから、ひとりぼっちのロビンソンの自由は、権利とはいわない。
 ロビンソンにとっての権利が問われ、それが生まれるのは、自分とは違う他人という存在が登場してからです。ロビンソンは、後に、いのちを助けた「蛮人」の一人をフライデーと命名し、召使いとして一緒に暮らしはじめました。フライデーという「他人」が登場した後に、ロビンソンの自由は、はじめて権利になる可能性が生まれたのです。つまり、権利とはひとりぼっちの自由ではなく、互いの自由を認め合うことなのです。
 

権利は約束によってもたらされる

 権利に関してルソーは、こんなことをいっています。

 「権利の平等、およびこれから生ずる正義の概念は、それぞれの人が自分のことを先にするということから、したがってまた人間の本性から出てくる」(ルソー、『社会契約論』)
 
 権利は神からではなく、人間の本性からもたらされる。ルソーはそういっています。ルソーのいう人間の本性とは、自己愛、すなわち自己中心性のことです。自己中心性とは、いいかえれば自分自身へ配慮することです。自己中心性の根底にあるものは、「私は欲する」、つまり個人の「欲望」にほかなりません。
 人は誰しも欲望や自由を優先したいと思う本性をもっている。そうすると必ず、他人との競争や対立が生じる。互いの欲望を譲らず自己主張をつづければ、殺し合いに至ることもある。結局、互いに相手を殺さず、ともに生きるためには、他人との間の「対立」を緩和したり解消したりするしかない。つまり、互いの自由を認め合うしかない。ここから権利の概念が導き出される。人間は、互いの欲望を認め、共に生きるために「約束」するのだ、ここに権利が生み出される根拠がある 。
 ルソーはこのように考えたのです。        

  ※「学ぶ」コーナーの「人権とは何でしょう」もお読 みください。                                                 

       (金 泰 明)
 

 
         


 

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