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「人身取引対策行動計画2009」策定される

5年ぶりに改訂された行動計画

  政府は09年12月22日に犯罪対策閣僚会議を開催し、性的搾取や労働搾取などを目的とする「人身取引」を防ぎ、加害者を取り締まり、被害者を保護するための「人身取引対策行動計画2009」(以下、「行動計画2009」)を決定しました。同会議は内閣総理大臣が主宰しており、会議の構成員は全閣僚で構成されています。

 「人身取引行動計画」は04年12月に「人身取引対策関係省庁連絡会議」によってはじめて策定され、それに基づいて対策が実施されてきました。

 「行動計画2009」の序文では、行動計画の策定後の過去5年間で、偽変造や不正使用の防止のためICチップを搭載した日本の旅券(パスポート)の導入など水際対策、在留資格「興行」の審査の厳格化(法務省令の改正)、人身売買罪の創設(刑法改正)、被害者への在留特別許可の付与(入国管理法改正)など「施策が着実に実施され、我が国の人身取引対策は大きく前進した」と肯定的な評価をしています。
その結果、フィリピン人女性をはじめとする「興行」で入国する被害者の数が顕著に減少するなど、「各種対策は大きな成果を上げたと言える」と明言しています。

 一方、「ブローカー等が被害者を偽装結婚させるなどして就労に制限のない在留資格をもって入国させるなど、人身取引の手口はより巧妙化・潜在化しているとの指摘もある」と認識も明らかにしています。
そうした認識から、「政府一体となった対策を引き続き推進していくため」、改訂版として策定されました。

 「行動計画2009」は、大別すると、1.防止、2.撲滅、3.被害者保護、4.対策の基盤整備という柱から構成されています。

「行動計画2009」の概要

  「防止」に関しては、写真情報を搭載したICチップの先をゆく第二バイオメトリクス(指紋や虹彩)を搭載した次世代IC旅券の導入の検討という水際作戦の強化、偽装滞在・不法滞在を伴う人身取引を防止するための在留管理の徹底などといった管理強化が打ち出されています。一方で、取り締まりを通じて人身取引事件を掘り起こし被害者の救済を図ることが盛り込まれています。

 「撲滅」に関しては、新たに「児童の性的搾取」については「ゼロ・トレランス(不寛容)」の観点から厳正に対応するという方針や、性的搾取だけでなく、外国人研修・技能実習生を意識した脈絡で労働搾取の認識も加え、悪質な雇用主、ブローカーなどの取締りの方針を打ち出しています。

 「被害者の保護」は、チラシ、リーフレットなどを作成し、被害者の目に触れやすい場所に配布するなど工夫を凝らして潜在的な被害者が認識できるよう、各都道府県レベルにおける広報・周知を促進するという方針を明らかにしています。また、従来の行動計画では、在留資格のない人が被害者だと確認された際には、「弾力的な在留特別許可の運用を行うことにより、被害者の法的地位の安定に努める」としているにとどまり、不法滞在を理由に退去強制させるのではなく合法的に帰国するために「在留特別許可」を付与するという趣旨でした。

 しかし「行動計画2009」は、「帰国することのできない被害者については、本人の意思を尊重しつつ、その理由や、会話のできる言語等を考慮し」としているとともに、「個別の事情を総合的に勘案した上、必要に応じて就労可能な在留資格を認める」「・・・必要に応じて就労支援を行うよう努める」と踏み込んだ方針が提示されており、被害者の日本定住への可能性が開かれたことになります。

 「対策の基盤整備」について特徴的なことは、売買春防止のための学校教育などでの取り組みや性的搾取の需要側への啓発の推進を明記しています。

 以上のような対策の推進体制の強化を図るために、国と地方の関係行政機関で情報交換を行う枠組みを検討するとともに、「人身取引対策に係る政策の企画・立案・調整を一元的に担当する部局を設置する必要性の検討」を盛り込んでいます。

参照:内閣官房のウェブサイト  http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jinsin/index.html

参考:日本政府が「人身取引対策行動計画」を発表(ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ04年12月) https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section2/2004/12/post-47.html