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委員会の一般的勧告

人種差別撤廃委員会
一般的勧告25 (2000)
人種差別のジェンダーに関連する側面

2000年3月20日第56会期
CERD General recom. 25

  1. 委員会は、人種差別が女性と男性に等しくまたは同じような態様で影響を及ぼすわけでは必ずしもないことに留意する。人種差別が、女性にのみに、もしくは主として女性に影響を及ぼし、または男性とは異なる態様で、もしくは異なる程度で女性に影響を及ぼすという状況が存在する。女性と男性が、公的生活分野および私的生活分野において異なった生活経験をもっているということが明確に承認され、または認識されていない場合には、このような人種差別はしばしば見逃されるであろう。
  2. 一定の形態の人種差別は、そのジェンダーのゆえにとくに女性にのみ向けられることがありうる。たとえば、拘禁中または武力紛争中に特定の人種的または種族的集団に属する女性に対して性的暴力が行われる場合や、先住民女性の強制的不妊措置、インフォーマル・セクターの女性または外国で雇用されている家事労働者に対して、その雇用者が行う虐待などがそうである。人種差別の結果は、主としてまたはもっぱら女性に影響を及ぼすことがありうる。たとえば、人種的な偏見を動機とするレイプの結果としての妊娠がそうであり、いくらかの社会では、そのようなレイプの犠牲者である女性は追放(ostracism)のおそれもある。女性は、また、ジェンダーに関連した障壁のゆえに人種差別に対する救済措置や苦情処理手続きを利用できないことによって、いっそうの障害に遭遇する可能性もある。たとえば、法制度におけるジェンダーに基づく偏見や、私的生活領域における女性に対する差別などである。
  3. 委員会は、いくらかの形態の人種差別が女性に対して独自で特別な影響を及ぼすことを認識し、その作業において、人種差別と結合している可能性のあるジェンダーの要素またはジェンダー問題を考慮するよう努めるであろう。委員会は、この点に関する委員会の実行にとって、締約国と協力して、女性に対する人種差別、ならびに人種、皮膚の色、世系または民族的もしくは種族的出身を理由として市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利の完全な行使および享受において女性が直面している不利益、障害および困難な問題を評価し、これを監視するより体系的かつ一貫したアプローチを発展させることが有益であると信ずる。
  4. したがって、委員会は、各会期における作業(締約国が提出した報告書の検討、最終所見、早期警報手続きおよび緊急行動手続き、ならびに一般的な性格を有する勧告を含む)において、人種差別の形態を検討するに際してジェンダーの視点を取り入れ、ジェンダーに基づく分析を組み入れ、および他のジェンダーを除外しない言葉(gender-inclusive language)の使用を奨励する努力を強化するつもりである。
  5. 人種差別のジェンダーに関連する側面を十分に考慮に入れるための方法論の一部として、委員会は、その会期の作業の中に、ジェンダーと人種差別の関連に関する分析を含める。とくに次の点を考慮する。
    1. 人種差別の形態および発現の態様
    2. 人種差別が発生する諸状況
    3. 人種差別の諸結果、および
    4. 人種差別の救済措置および苦情処   置手続きの存在と利用可能性
  6. 委員会は、締約国が提出する報告書が女性に関する条約の実施に特定した情報、またはそれに関する十分な情報を含んでいないことに留意し、条約上の諸権利の、人種差別のない平等な享受に影響を及ぼす要因、およびかかる平等な享受を女性に確保するに際して経験している困難な諸問題を、質・量共にできるかぎり記述するよう締約国に要請する。人種または種族的出身別のデータであって、さらにそれを当該人種集団または種族集団内におけるジェンダーを基準に細分したデータがあれば、それがなければ注目されることなく、またそれに関心が向けられることのないままとされる可能性のある女性に対する人種差別形態を委員会および締約国が確認し、比較し、およびその矯正措置をとることが可能となるであろう。

(訳:村上正直/大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授)
『アジア・太平洋人権レビュー2001』より転載