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国際人権ひろば No.59(2005年01月発行号)

特集:人権教育の深まりと進展を求めて Part3

子どもの主体と子どもパワーを育む教育を

「韓国発『子どもの人権』からはじまる実践に学ぶ-2004日韓人権教育交流セミナー」

朴 君愛 (パク クネ) ヒューライツ大阪・主任研究員

  2004年11月26日、ヒューライツ大阪主催で、大阪で開催された第56回全国人権・同和教育研究大会の関連行事として、「韓国発『子どもの人権』からはじまる実践に学ぶ-2004日韓人権教育交流セミナー」を大阪市立弁天町市民学習センターで開催した。このセミナーは、ヒューライツ大阪が2002年秋から継続している日韓人権教育交流プログラムの一環として企画したもので、今回は「子どもの人権」に焦点をあてて韓国のNGOの教育活動を中心に議論と交流を深めた。韓国から「子どもの力でつくる国」(愛称:アヒムナ)教育文化研究所(注1)所長の金鍾洙さんと韓国女性民友会・家族と性相談センター(注2)所長の柳京姫さんが報告し、コーディネーターは、日本の子どもの人権促進に関わっている浜田進士さんが務めた。報告はビデオやパワーポイントによる教材紹介を交えた興味深いものであり、日本の参加者から多くの質問・意見が出された。次に報告の内容を簡単に紹介する。
  まず浜田さんから、日本の子どもの人権状況について報告があり、日韓の子どもの人権についての認識の共有を図った。
  子どもの権利条約が日本で1994年に批准され10年になる。一方、子どもの実態を見ると、虐待・体罰・いじめなどの人権侵害が増えている。社会格差が拡がり、厳しい環境にある子どもたちが取り残されている。子どもの権利条約が提唱する内容のうち、「保護」に関しては児童買春・ポルノ禁止法や虐待防止法の制定などある程度前進したが、「子どもが権利の主体」という点は社会に根付いていない。元気の出る事例もある。先進的な自治体が「子ども参加」の仕組みを作ったり、権利という視点で子どもの人権に取り組む団体が相当増えてきた。子どもに対する性暴力についてもNGOが積極的に防止や被害者救済にとりくんでいる。ただ性暴力や「援助交際」については人権侵害に焦点をあてるのか、道徳的な視点で見るのかという考え方の違いがある。子どもの人権を考える際、私は権利を基盤にしたアプローチが大事だと考えている。

金鍾洙さんの報告-人権の死角地帯にいる子どもたちと共に


  韓国では学歴や成績中心の教育が行われている。大人が青少年を見る時、「新人類」であり、感情が暴発する存在として非難することが多い。1998年以前、子どもは「明日の主人公」とされ、権利の享受が棚上げされてきた。多くの政策が変わってきたが、自治体職員や教員の意識が変わらないでいる。また懸命に努力しても誰もがソウル大学に入れるわけではない。多数の子どもたちが大人の期待値に届かない。このような社会で、青少年が自尊感情や自信を喪失している。
  現在、人権に配慮した政策が進められつつあるが、その例外にいる人たち、とりわけ1997年のアジア通貨危機によるIMF構造改革を導入した結果としての貧困家庭や家庭崩壊の増加、南の社会に適応できない脱北者、劣悪な条件で働く外国人労働者など「人権の死角」にいる子どもたちの状況が深刻である。
  アヒムナは、「子どもたちの」(アイドゥレ)「力で」(ヒムロ)「作っていく国」(マンドゥロガヌン ナラ)の略称で、スペインのベンポスタの活動にアイデアを得て、子どもたちが本当に社会の主人公になれる社会を作っていく教育活動である。大人による「競争・差別・戦争」がある社会の突破口を開こうと、アヒムナ・キャンプを2002年から試みている。前述した困難な状況にある子どもや、在日コリアン3世・4世、オルタナティブな教育を求める家庭の子どもが参加して毎回約150人が集い、数日から1週間程度共にすごす。
  アヒムナ・キャンプでは、子どもたちがアヒムナ公務員の賃金、起床就寝時間、迷惑行為に対する対処などすべてのことを決定する。そうなると問題が起こるが、解決には自らがそのプロセスを模索するほかない。アヒムナ市民総会が決定する機関であり、その決定に従うプロセスを身体で学んでいく。これが教育の大事なプロセスとして発展していく。決して新しいシステムではないが、ここに参加する子どもたちが現在、生活する場所を考えるとユートピアといえるかもしれない。

柳京姫さんの報告-「堂々たる性・安全な性・楽しむ性」を通じた性暴力防止の教育


  韓国で性暴力という言葉がよく使われるようになったのは、1994年の「性暴力犯罪の処罰及び被害者保護に関する法律」制定以降である。家庭内の性暴力、とりわけ継父や実父による子どもへの性暴力が社会問題になってこの法律が生まれた。現在、全国に112の性暴力に関する相談所がある。さらに2004年に「性売買斡旋等の処罰に関する法律」「性売買防止及び被害者保護に関する法律」が制定され、性教育をどう進めるか議論になっている。ここでは青少年に対する性暴力をどう防ぐか、その教育活動について話を進める。
  この10年間に性暴力は増えている。性暴力の定義について、韓国女性民友会ではセクハラも性暴力に含めている(表1)。加害者よりも被害者が道徳的に問題にされるという社会的雰囲気があるため問題が表面化されにくい。性暴力が起こった時に二つのアプローチが必要である。一つは加害者を処罰する。二つ目は被害者への二次被害を防ぎ、被害者が立ち直ることができるよう支援をすることである。
  2003年、教育人的資源省(日本でいう「文科省」)と韓国女性民友会が協力して、中学・高校生2,300人を対象に性暴力についてアンケート調査を行なったが、性暴力を誤解をしている者が多い。その事例として「性暴力を受けるのは女性が肌を露出したり、派手な服装するからだ」「性暴力の加害者は精神的に問題を抱える人」という認識があげられる。また被害者と加害者では見方が違う。加害者は親しみの表現と思って接触したのに、性暴力といわれ心外であるという。
  学校であっても性暴力とは無関係ではない。むしろ教師と生徒の間で垂直的で権威的な構造があるためより明るみに出ない。「性暴力のない学校をつくる」という思いで教師から何をすべきかという意見も集め指針にしてみた。
  また青少年の性に関連した独立の団体として「青少年保護委員会」がある。私たちは「保護」という言葉には賛成していない。「青少年人権委員会」に名称を変更すべきだと考えている。
  韓国女性民友会・家族と性相談センターが進める性暴力予防教育としての性教育の核心は、青少年が性的な自己決定権を持てるようにするトレーニングである。言い換えれば「堂々とした性、安全な性、楽しい性」である。青少年を主体としてみなし、自分を表現し、問題を自分で解決できるようにすることであり、「合意」がキーワードである。
  毎年、街角で青少年性暴力予防のキャンペーンとして開かれた性教育を行なっている。「自分の身体の主人公は自分だ」という企画である。人権教育、人間教育は様々な部分で進められているが、最も難しいのが性的な部分であると思う。自分の身体をどう理解し受け入れるかができれば、相手に対する理解が深まる。自分と相手は思っていることが違うという認識が必要である。

性暴力というのは?
<韓国女性民友会・家族と性相談センター作成の性教育の教材より>
1 不快な性的冗談やわい談は性暴力である。
2 インターネットにあるひわいなメッセージや写真、絵を見せるのは性暴力
3 自分が望まないポルノなどを見せられるのは性暴力
4 いやだというのに継続して追いかけられるのは性暴力
5 望まない身体的接触(キス、抱擁、身体に触れるなど)は性暴力

まとめ


  コーディネーターの浜田さんの「日韓の共通の課題として、『保護』から視点を変えて『権利を基盤にしたアプローチ』でとらえていく動きがあるが、意見表明権・参加・性の自己決定権などがまだ地域社会で受容できていないことがみえた。子どもの人権について、子ども当事者のつながりを作ることと大人の意識改革の必要性が述べられた。個人として、東アジアという広域レベルで子どもの人権・救済システム作りを共に進めたい」というまとめの挨拶でセミナーがしめくくられた。

(注1) アヒムナは、1993年に始まったキリスト教社会教育センターの地域活動や市民グループの教育活動の成果が実って現在に至っている。次回2005年1月のキャンプは「アヒムナ平和学校」に発展する。今後は社団法人アヒムナ運動本部として子どもの権利を広げる運動を進める。事務局は京畿道アンソン市。HP:http://www.ahimna.net(韓国語)

(注2) 韓国女性民友会は1987年結成され、女性の労働問題を中心に女性の人権と性平等の実現をめざし諸活動を行っている。会員数は約1万4千人、全国に11支部がある。本部事務局はソウル市中区。韓国女性民友会・家族と性相談センターは1995年設立されて、性暴力・DVの相談所として女性省に登録され、相談や教育活動を行なっている。HP:http://www.womenlink.or.kr(韓国語)

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