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国際人権ひろば No.53(2004年01月発行号)

現代国際人権考

多様な地域の課題に国際的視点を

北口 末広 (きたぐち すえひろ) 近畿大学教授・ヒューライツ大阪評議員

国際的な視点や基準を活用


 ヒューライツ大阪が位置する大阪にも、多くの地域と同じように人権上多くの課題が山積している。部落差別や民族差別をはじめ多くの差別問題が存在し、新しい問題として野宿生活者等の経済情勢に密接に結びついた問題も発生している。これらの地域的課題と国際的基準をリンクすることがますます重要性を増している。
 地方自治体や国内で発生している多種多様な課題に国際的な視点や基準を活用することによって、課題解決が大きく前進する場合が少なからずあり、多くの成果を上げている。
 国際連合をはじめとする国際機関のこれまでの活動によって、人権やその他の問題にかかわって多くの条約や基準が成立し、これまでの各国の努力によって諸外国にも多くの先進事例が存在する。これらの条約や先進事例が地域の課題を克服するときに大きく役立っている。特に、日本ではそのことが顕著である。一般的に日本は国際的圧力に弱いといわれ、消極面も存在するが、一方で国際的な人権基準は日本国内において、人権基準を高めていくときに積極的な役割を果たしてきたし、今後も重要な役割を担うことは言うまでもない。これらの面をもっと活用する必要があり、そのためのヒューライツ大阪の役割も大きい。

ヒューライツ大阪の重要な役割


 そもそも国際的な基準や国際条約が成立してきたのも、それぞれの国が抱えている人権や環境等の問題を解決するためにできたものであり、地域における具体的な課題への取り組みが発展してきた中で国際基準や国際条約が成立してきた側面もある。そうした成立過程をふまえるならば、逆に国際基準等を地域の課題解決等に活用するのは当然のことであり、国際基準等もそのことを期待している。ヒューライツ大阪の重要な役割もそこにある。
 また、これらの取り組みはこれまでの地球的規模の英知とパワーを結集することにもつながる。それだけではなく、先にも述べたように国際条約等を強化することにも役立つ。国内においても具体的法律がどのように活用されたかによって、法の意味にも少なからず影響を与えるのと同じである。

グローバリゼーションの真の意味


 ところで、「方針は現実から与えられる」といわれるが、現実を正確に捉えるということは、その背景までを正確に捉えるということであり、現実とは過去の積み重ねの結果であるという視点も忘れてはならないということである。あらゆる要素が積み重なって「今」が存在しているのであり、国際的視点を持つということはより正確に「今」を捉えることにもつながる。
 さらに、これまでの国際的な成果を活用するということは、過去の多くの人々のたゆまない努力を活用することにもなる。
 今日、日本ではグローバリゼーションという言葉が、制限のない市場原理の導入と勘違いされて使用されている面があるが、当初、グローバリゼーションはそのような意味で使われていたわけではない。人権や経済的平等という概念を基盤として語られていたのである。そのような意味でのグローバリゼーションを前提とすれば、国際人権基準のグローバリゼーションが必要であり、地域の課題を地球的な規模で考えていく必要がある。そのことが今、最も求められている。

国際基準や条約内容の豊富化を


 また、地域の課題を克服するときに国際基準や条約を活用することは、国際基準や条約を強化するのにも役立つ。活用されない公式文書は実質的に死文化していくように、活用されない国際基準や条約は内容を豊富化することもできないし弱体化していく。そのような意味で地域の課題を克服するときに国際的な基準を活用することは、国際的な取り組みに貢献することにもなる。
 国際的視点と現場的視点がクロスし、大きな成果に結びついた事例は無数に存在している。そのような実践例から謙虚に学び、今日的な私たちの課題の解決につなげていく必要がある。先述したが、地域の課題においても常に地球的規模の英知とパワーを結集する視点を持つことを大切であることを指摘しておきたい。
 国際社会の末端にあたる地域的な現場が活性化した取り組みを展開しているかどうかが、国際機関が十分な役割を果たしているかどうかのメルクマール(指標)であり、逆に国際社会の取り組みを地域につなげているかどうかが、ヒューライツ大阪のような地域の国際的な機関が十分な役割を果たしているかどうかの評価基準である。