1. TOP
  2. 資料館
  3. 国際人権ひろば
  4. 国際人権ひろば No.130(2016年11月発行号)
  5. 婦女新知基金会を訪ねて

 
Powered by Google


国際人権ひろば Archives


国際人権ひろば No.130(2016年11月発行号)

特集 台湾の人権とエンパワメントに出会う旅・報告

婦女新知基金会を訪ねて

林 貞和(イム ジョンファ)
大阪府立大学人間社会学研究科博士後期課程

 婦女新知基金会(Awakening Foundation)

 

 婦女新知会とは、1982年に女性の権利に関する雑誌を出版する出版社としてスタートした台湾初の女性人権NGOである。その後、1987年に婦女新知基金会と改名し、現在に至るまで女性の権利擁護を目指すNGOとして活動している歴史深い団体である。現在、婦女新知基金会のメンバーは、台湾大学の学生や東呉大学の学生を含む25名の活動家がそれぞれの専門分野で活動しており、そのうち6名がフルタイムで対応している。婦女新知基金会の運営は市民団体からの定期的な援助、パーティーを通した募金活動で運営されている。同団体の活動について報告してくださったオフィス・ディレクターの覃玉蓉さんによると、今年は10月と11月に募金パーティーが予定されており、加えて、政府に対し宝くじ収益の一部を婦女新知基金会が援助してもらえるよう働きかけているとの説明もあった。婦女新知基金会の主な活動は、「家庭内における性別平等、職場におけるジェンダー平等、女性の政治参加の提唱、リプロダクティブヘルス・ライツ、女性のエンパワメント、多文化民族教育」などで、幅広い分野で活動している。

 ここでは、覃さんの報告の中で、特に私の記憶に残った、韓国・日本の女性が共感できる事例をご紹介したい。

 

 <職場におけるジェンダー平等>をめぐる取り組み

 

 台湾で、職場におけるジェンダー平等に関する取り組みのきっかけは、1987年に国父記念館で案内係として働いていた女性が、結婚を理由に退職を強要されることに始まった。当時の台湾では、女性が30歳になると退職を勧告される暗黙のルールがあり、その背景には若くてきれいな女性が優先されるという性の二重規範が存在していた。

 婦女新知基金会は、この問題を台湾内のあらゆる職場におけるジェンダー不平等の問題として認識し、政府の無関心を批判しながら、職場内のジェンダー平等に関する法制化に取り組んだ。これに対し台湾の企業は、法律が可決されると女性の採用を禁ずるという抵抗を行ったがこれに屈せず、その結果、2002年に「職場におけるジェンダー平等法」を制定させた。同法により、医師の証明なしで生理休暇の取得、児童・親の世話のための7日間の休暇の取得、3歳までの育児休暇として2年間取得が可能となり、2008年からは給料の6割をもらえることが可能になった。同団体は法制化だけではなく、その後の法律の実行可否についても目を向けており、現在までも監視の目を緩めない。例えば、法律の制定以降2011年度の男性育児休暇取得者5%が、2016年度には17%に増加し、同団体は男性育児休暇の取得者の割合50%を目標としていると述べた。

 さらに同団体は、2007年トランス・ジェンダーのエンジニアである周さんが女装し女性トイレを使用する件をめぐる相談に乗り労働局に異議を提起した。同団体の活動によって制定された「職場におけるジェンダー平等法」は、女性を守るだけの法律ではなく、多様な性が職場という空間で平等に働く環境作りにも機能している。他に、職場におけるセクハラ問題の取り組みとして、例えば30人以上の職場に対し相談窓口を設けるように勧告している。同団体は、「職場内のジェンダー平等法」制定にとどまるのではなく、その後の法律の実施に関するリサーチ、職場に対する教育活動などを通して多様な性が平等に生きられる職場・社会実現を目指している。

 

 婦女新知基金会を訪ねて

 

 韓国と台湾は、1980年代民主化闘争が繰り広げられる中で、最前線に立っていた多くの人々が国家権力によって人権を蹂躙された激動の歴史を共有している。また、この激動の歴史の中で起こった公権力による女性に対する暴力は女性の人権運動をさらに発展させる原動力となった。台湾の女性団体の訪問は、韓国と同時代に国家に対する民主化という抵抗の歴史を共有しながら、女性であるがゆえに受けなければならなかったジェンダー不平等の問題に向かって取り組んできた女性の抵抗の歴史を振り返る良いきっかけであった。また、その歴史は、熱意を持った若い世代に、各自の分野で専門的な知識を学

んでいる大学生らによって次世代に着々と繋がれていた。

ひろば130号p.8 婦女新知基金会スタッフと参加者一同.jpg

婦女新知基金会スタッフと参加者一同


To the page top