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国際人権ひろば No.123(2015年09月発行号)

人種差別撤廃条約日本加入20年

時代を担う若者、先住民族の権利を語る-アイヌ民族、琉球・沖縄の立場から  人種差別撤廃条約日本加入20年記念連続セミナー 第1回報告

永井 文也(ながい ふみや)
市民外交センター

 2015年は日本が人種差別撤廃条約に加入して20年目にあたる。これを記念して、今年は人種差別撤廃NGOネットワークとヒューライツ大阪およびその他3団体の共催で、連続5回のセミナーが開催される。その第1回目として、6月27日に大阪クリスチャンセンターで、先住民族の権利に関するセミナーが開催された。アイヌ民族、沖縄・琉球民族、そして日本(大和民族)のそれぞれの若者の代表が登壇して、トークセッションを行った。私も、国際的な先住民族権利運動に取り組む非先住民族のNGOに関わってきたことから、登壇する機会をえた。以下、本セミナーの概要を報告する。

 

 トークセッション

 

 本セミナーでは、まずアイヌの子守唄の映像、そして名武美智子さんによる琉球舞踊が披露された。その後、登壇者がそれぞれ自己紹介を行い、司会者からの質問・回答の順で進行していった。登壇したのは、アイヌ民族の阿部千里さん(アイヌ・先住民族電影社代表)、沖縄・琉球民族の大城尚子さん(沖縄国際大学非常勤講師)、そして私の3名であった。

 自己紹介では、それぞれの国際的な先住民族権利運動に関わるようになったきっかけ・経緯、現在の活動といった簡単な紹介を行った。それに続き、アイヌ・琉球民族から見た日本との関係(私は逆に日本人から見たアイヌ・琉球民族)、またアイヌ・琉球民族、大和民族として先住民族権利運動にどう関わり、国際規準の発展はそれぞれの活動にどのような意味を持つのか、といったことを話した。

 阿部さんは、まず自身のアイヌとしてのルーツや日本人の中での生活、アメリカ留学、先住民族問題への取り組みのきっかけなどを紹介した。そして、最近は自身で立ち上げたアイヌ・先住民族電影社でアイヌに親しむミーティングを重ねていることも報告した。また、アイヌの権利問題に対する国際的な運動の重要性を指摘した上で、これらの国内的な実施に議論が移りつつあることを話した。

 大城さんは、20歳の頃から先住民族問題に関わり始め、現在は植民地主義に関する研究を行っていることなどを紹介した。また、大阪で大学院生として過ごし、今年の4月から沖縄に戻った際に、「琉球」という言葉が以前より用いられるようになったことや、先住民族の権利の中核である自己決定権に関する議論が増えてきていることを話した。

 また、私はアメリカ先住民族や市民外交センターの代表との出会いをきっかけに先住民族問題に関心を持った背景を話した上で、いわば加害者サイドである日本人として、先住民族の支援運動に取り組む難しさを話した。そして、日本人としての関わり方の一例として、私の属する市民団体の活動などに言及した。

 これに続く質疑応答では、会場の参加者から質問やコメントをいただいた。例えば、主権国家体制や国連という国際組織で先住民族の議論が行われること自体への問題提起や、アイヌ民族をめぐる教科書問題ならびに国境の越境権に関する質問、また現場からみた時に国連での議論が十分に行き届いていない実態など、内容は多岐に渡り、設けられた時間では足りないといった印象を受けた。

永井さん写真.jpg

左から阿部さん、大城さん、筆者

 

 最後に

 

 時間にして2時間半であったが、非常に内容の詰まったセミナーとなった。先住民族問題に取り組む日本人の若者の一人として、今回の集会は非常に有意義であったと同時に 、共通の問題に取り組むアイヌ・琉球民族のそれぞれの若者と話すことで、多くのことを学び、考えることができた。今後も、私のできる範囲で取り組んでいくのと同時に、より多くの人たちが先住民族問題に関心を寄せてくれることを心から願う。