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国際人権ひろば No.120(2015年03月発行号)

ヒューライツ大阪設立20周年を迎えて

災害に遭ったコミュニティの子どもへの心理社会的支援 ケース・スタディ:オーロラ州ディンガラン

アグネス・カマチョ
心理社会的支援および子どもの権利リソースセンタ― シニア・プログラム・オフィサー

 フィリピンは、災害が多い国であり、洪水災害が非常によく起こるにも関わらず被害を受けやすい地域に多くの人が住む国である。
 フィリピンのオーロラ州ディンガランは2004年11月に2週間で4つの台風に見舞われた。この地域では台風被害や土砂災害はよく起こるが、このような深刻な災害は初めてであった。10万8千以上の世帯が被災し、200人以上が亡くなった。政府や自治体が災害支援のために駆けつけ、私たちも社会心理的支援を行った。災害で、家も生活の糧も家族も失ってしまった人が多くおり、様々な感情に支援が適切に対応できるかどうかがでその後の対応が大きく変わるのである。
 私たちは、2005年1月から4月にディンガランでプロジェクトを行い、また2009年にも別のプロジェクトで同じ地域で心理社会的アプローチによる災害支援を行った。
 いずれのプロジェクトも教会、学校や保護者グループをパートナーとして、コミュニティとともに行ったことが重要な点である。
 私たちは、子どもの権利を基盤にして活動している。子どもの権利は、子どもの権利条約にあげられている、子どもの最善の利益、平等の権利、参加の権利など多くの権利を総合した権利である。子どもの権利は災害のときにも十分に尊重されなければならない。また、子どもたちは弱いだけの存在ではない、自分たちの回復や発達の主体でもあることを念頭においておかなければならない。私たちも、子どもたちを支援の受益者としてだけでなく、常にパートナーとして考えてきた。
 私たちのプロジェクトは、コミュニティを巻き込んで実施されたが、そのことによって、コミュニティがプロジェクトを自分たちのものと考え、責任感をもつことができた。現地に入ってまず、コミュニティとの協議を行い、年齢などで差別することなく、さまざまな住民の声をあつめるために、大人や子どもの心理社会的アセスメントのワークショップ、コミュニティとの計画の確認、モニタリングおよび評価、プロジェクトの計画に関する研修を行った。
 プロジェクトの目的には、安心感を提供するということもあった。例えば、被災後、雨が降ると怯え、学校に行きたがらない、不安に陥る子どももいる。また親しい人を亡くした悲しみを抱える子どももいる。そのような感情を安全な環境において表現することで、自分自身の感情を認識することができる。また、イベントを通して表現することで、問題を乗り越えていくことができ、他の子どもたちと互いに協力することもできる。
 さらに、子どもにやさしい社会づくりのために心理社会的アプローチの研修をコミュニティの中で子どもたちと関わる親、教員や自治体職員に対して行った。さらに、子どもや若者の参加を促すために、子どものグループをつくり、演劇、ニュースレターの発行などの活動を行った。
 災害はその後も多発しており、最近も台風被害が起ったところである。災害は不可避であり、それに対応する能力やスキルをつけなければならない。そのなかでも、メンタルヘルス、心理社会的支援に関わる側面が重要である。
 
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