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日本への渡航をめざすフィリピンのJFC母子~人身取引をなくすために(part 3終わり)

教会とNGOとの意見交換
スタディツアーは、8月4日にダバオからマニラに戻り、カトリック司教協議会(CBCP)のもとに設置されている移住・移動者委員会(ECMI)、および1988年以来フィリピンのJFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)母子の支援に取り組んでいる地元NGOのバティスセンターと合同で、近年のJFC母子をめぐる人身取引の防止に向けた情報・意見交換のための会合をもちました。
ECMI の代表のレスティ・オグシメル神父は、フィリピンから合計1,100万人を超える人々が海外移住していること、渡航先の国・地域に相談窓口を置き、さまざまな課題に直面する移住者の支援をしていると説明しました。20万人超のフィリピン人が暮らしている日本には、フィリピンから神父やシスターを約60人送っているといいます。
レスティ神父は、「かつて海外からの送金額ばかりが話題になったけれども、近年は離別状態となった家族の問題などに目が向けられており、2015年1月にフランシスコ法王がフィリピンを訪問し面談した際、移住者・移民家族をめぐる課題が重要なテーマとして取りあげられました」と述べました。
バティスセンターのヤップ代表は、「JFCたちは、仕事は悪条件で、二級市民として扱われることなどから、日本は理想的な移住先ではないと気付いています。それでもなぜ日本に行きたいのかと尋ねると『アイデンティティを確認したい』と答が返ってきます。それだけに、私たちは渡航を止めることはできません。しかし、日本への安全な移住を保障することもできず、問題解決は一筋縄ではいかないのです」とジレンマを語りました。
ツアーの参加者は、それぞれの活動領域は異なるものの、今後の解決に向けた協力を確認しあいました。
 
人身取引をなくすために日本社会は?
人身取引の被害者として2015年3月に日本から帰国した母親と2人のJFCがバティスセンターに呼ばれて参加し、日本での体験を簡単に報告してくれました。この3人は、仲介団体などによる「支援」を得て、2014年5月に来日し、パブで働き始めました。ところが、賃金も食糧もほとんど与えられず、2人の子どもは学校に通わせてもらえませんでした。事前の約束とは全く話が食い違っていたのです。
母子は警察に助けを求め、半年以上にわたり公的なシェルターで保護されていました。そして、事件がひと段落した2015年3月にフィリピンに帰国してきました。安全上の理由から外部と遮断された状態のシェルター生活で、帰国前は精神状態が不安定になっていたようです。
2009年に施行された改正国籍法によって、父親からの認知を受ければ婚外子のJFCは日本国籍を得ることができるようになりました。その子どもを養育する母親も日本で働くことができるようになりました。つまり、国籍法の改正がJFC母子の権利回復への道筋をつけたのです。しかし、その権利行使のプロセスで仲介団体や日本での雇用者による搾取や人権侵害が生じているのです。この矛盾に日本社会はどう対応し、JFCの日本への移住、あるいは帰国における搾取をどのようになくしていくべきなのか。今回のスタディツアーを通じてその課題の多くが浮き彫りになりました。(藤本伸樹) 2015 年8月21日
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(2015年08月21日 掲載)