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  4. ユネスコ「差別撤廃アジア・太平洋都市連合」の目指すもの

2001年ダーバン会議(反人種主義・差別撤廃世界会議)とその後の動向

ユネスコ「差別撤廃アジア・太平洋都市連合」の目指すもの

  ユネスコ(本部:パリ)は2006年8月にタイのバンコクで開催した「アジア・太平洋における包括的な社会をめざした都市会議」において、「反人種主義・差別撤廃アジア・太平洋地域都市連合」を設立しました。具体的な行動計画として、教育、文化、雇用などの分野における10項目のコミットメントが、バンコク、プノンペンなど加盟の意志表明をした6都市の代表者などによって採択され、始動しました。
  10項目のコミットメントの骨子は、次の通りです。
1.人種主義と差別に関する現状把握および自治体政策のモニタリングを行う。
2.差別や社会的排除の問題と取り組むために、自治体および地域社会における政治的リーダーシップを実践する。
3.包括的な社会を促進する。
4.人種主義や差別の被害者に対する支援を強化する。
5.情報へのアクセスを通じて市民の広範な参加とエンパワメントを促進する。
6.機会均等な雇用者およびサービス提供者としての都市(行政)を促進する。
7.機会均等実践の積極的な支持者としての都市(行政)を促進する。
8.教育を通じて人種主義や差別に対抗する。
9.文化的多様性を促進する。
10.人種主義者による扇動および関連する暴力を予防し克服する。
 
 加盟した自治体は、市民社会と協働して、これらのコミットメントを実施することを通じて、差別や排除をなくすための施策を十分に講じるよう求められています。発足後、「反人種主義・差別撤廃アジア・太平洋地域都市連合」は、07年6月にプノンペンで開かれた会議において、「人種主義」という概念の認識がアジア各国で異なるなどの意見を受けて、「差別撤廃アジア・太平洋都市連合」へと改称されました。
「都市連合」は、国連が01年に南アフリカで開催した「反人種主義・差別撤廃世界会議」(ダーバン会議)において採択された宣言や行動計画のなかで、ユネスコに対して多くの取り組みを要請したのが発足のきっかけです。ユネスコは、自治体こそが国際人権基準を実施する現場であり、反人種主義・反差別を志向する効果的な施策を実践するためのネットワークの可能性が存在することに着目しました。2004年以降、準備が進められ、世界の地域ごとに人権、メディア、教育など異なる分野の専門家やNGO、マイノリティ・グループの代表などが参加する準備会合を開き、グローバリゼーションに伴う新たな形態の差別に関する議論などを行いました。その結果、ヨーロッパ(04年)、アフリカ(06年)、ラテンアメリカ・カリブ地域(06年)、北アメリカ(07年)、アラブ(08年)でも同様の「都市連合」が順次結成されました。08年、アジア・太平洋を含む6地域の代表がフランスのナント市に集まり「反人種主義国際都市連合」が結成されました。
2013年3月現在、「差別撤廃アジア・太平洋都市連合」は、韓国、中国、フィリピン、スリランカ、オーストラリアなど21カ国の74都市(自治体連合を含む)が加盟するネットワークに成長しています。しかし、日本の自治体はどこも加盟していません。
さまざまな差別が根強く存在するとともに、集団的・暴力的に外国人排斥などを標榜する団体が各地で台頭している近年の日本において、多くの自治体が「都市連合」に合流し、差別や排除、人種主義をなくし、人権が尊重された地域社会を構築していくための効果的な政策を学ぶことが今こそ求められているのではないでしょうか。(藤本伸樹)
 
参考:ユネスコ・バンコク事務所(英語)
http://www.unesco.org/new/en/social-and-human-sciences/themes/fight-against-discrimination/coalition-of-cities/asia-and-the-pacific/